本研究は、バイオ医薬品の取り込み機構を、培養細胞を用いて構築し、in vitoroで評価することを最終目標として行ってきた。 本年度は、昨年度に引き続き、正常組織由来の培養細胞、繊維芽細胞、血管内皮細胞、腎上皮細胞、心筋細胞に対してモデルバイオ医薬品として、α-ガラクトシダーゼ(GLA)の取り込みに関する検討を行った。 マンノース6リン酸レセプター(M6PR)に対するsiRNAを用いた検討、並びに、基質であるマンノース6リン酸による阻害実験(濃度依存性、期間依存性)から、GLAの取り込みにM6PRを介さない機構が存在することを見いだした。また、検討を行った正常組織由来細胞のなかで、取り込み特性に違いが認められたことから、本培養系が組織の特性を維持していると仮定すると、臓器ごとのバイオ医薬品の取り込みを推測する評価に本実験系が応用できると思われる。 また、本年度は、薬物の取り込みに重要な血管内皮細胞において、平面培養に加えて、マトリゲル中での立体培養、さらにスフェロイド形成による三次元培養下での薬物取り込み評価を検討することとし、基礎検討を行った。現時点では、評価系の構築が試行できた状態であるため、本補助金終了後においても、その評価系をもちいたバイオ医薬品の取り込み機構を検討する予定である。さらに、近年、癌治療領域においても、抗体医薬を中心としてバイオ医薬品の急速な普及がなされていることから、がん分子標的治療薬における基礎検討をも行った。本研究は、今後、改変抗体医薬も含む、バイオ医薬品の取り込み評価を簡便にin vitroで行う評価系の構築に寄与するものと考えられる。
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