研究課題/領域番号 |
24590222
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
高田 和幸 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (10434664)
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研究分担者 |
北村 佳久 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (60195295)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 神経科学 / 痴呆 / トランスレーショナルリサーチ / 脳神経疾患 / アルツハイマー病 / ミクログリア / 骨髄幹細胞 |
研究概要 |
高齢化が進む日本において、加齢を最大の危険因子とするアルツハイマー病の根本的治療法開発は急務の課題であり、最も期待されているアルツハイマー病の根本的治療戦略は脳内に蓄積するアミロイドβタンパク質(Aβ)の除去である。脳構成細胞の一つであるミクログリアは、Aβ貪食機能を有しており脳内Aβ除去システムの一端を担う。しかし、加齢とともにミクログリアにも老化・機能不全が誘導され、アルツハイマー病病態形成に深く関与する可能性が示唆されている。本年度はアルツハイマー病脳でのミクログリアのAβ貪食における病態に関連した機能変化について解析した。その結果、アルツハイマー病脳のAβ蓄積部位である老人斑には、核内タンパク質として知られるHigh mobility group box protein-1(HMGB1)がAβとともに沈着していることがわかり、ミクログリアのAβ1-42の貪食については細胞内への取り込みを抑制することで、Aβ1-40の貪食についてはAβの細胞内での分解を抑制することでそれぞれ貪食を阻害していることが示唆された。以上の解析から、アルツハイマー病では細胞外にHMGB1がAβとともに沈着しており、ミクログリアのAβ貪食機能を阻害することで、病態の増悪因子として働くことがわかった。この成果は、骨髄由来ミクログリア様細胞移植による細胞治療法戦略の開発においても重要な知見であり、骨髄細胞から調製されるミクログリア様細胞の貪食機能へも細胞外HMGB1が影響を与える可能性が示唆され、調製細胞のさらなる工夫や、貪食機能促進を考慮する必要があることが示唆された。今後の移植細胞の調製についての参考となり、二年度目以降の解析に大変役立つ意義深い研究成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の年次計画通り骨髄幹細胞からミクログリア様のAβ貪食細胞が効率良く、コンスタントに調製できている。また初代培養したミクログリアと腹腔内マクロファージ、ならびに骨髄由来ミクログリア様細胞の細胞表面抗原についても解析が進んでおり、よりミクログリアに近い細胞として判断するためのマーカーとなる候補も解析できつつある。しかしながら、移植細胞から分泌されるサイトカインの解析がまた解析途中であり、この点についてはさらに解析を続ける必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた結果を基に、平成25年度はin vivoの解析を実施する。具体的には野生型マウスやラットを用い、移植細胞の脳移行性を解析する。また、Aβ海馬内投与ラット(ADモデルラット)やPS/APPマウスを用い脳内Aβ量の変化についてELISAにより解析する。さらに、記憶障害についてもモーリス水迷路を用いて解析することで、ヒトへの応用を意識したより臨床に近い解析を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度から持ち越す研究費はない。 平成25年度の研究費は、移植細胞調製のための培養用品、試薬、分化状態の解析抗体やAβ量を測地するためのELISAキット、移植に用いるラットやマウスならびにその飼育のための餌や床敷きを購入する。脳切片作製のための試薬や、細胞移行性やAβプラーク検出のための抗体を購入する。また論文発表のための英文校正費や出版費、成果発表のための旅費にも充てる。
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