研究概要 |
5-FUをkey drugとした癌化学療法での個別化医療を目指し、PK/PD理論に基づく定量的治療効果予測システムの構築を目的とした本研究において、前年度までに、5-FUの代謝に関与する肝臓中DPD活性に着眼し、間接的なDPD活性測定としての血漿中ジヒドロウラシル/ウラシル比の時間的変化が血漿中5-FU濃度の推移と相関することを明らかとした。一方、生体内DPD活性には日内変動(サーカディアンリズム)が存在することが知られており(Jiang H., et.al. Br.J. Pharmacol., 141, 616-623, 2004)、非活動時においてDPD活性が低下する傾向があるというJiangらの報告があるが、我々のラットでの5-FU投与実験においても、投与時刻を変化させたところ血漿中5-FU濃度は非活動時に上昇する傾向を認めた。(Kobuchi et al., Biol. Pharm. Bull., 34, 365-376, 2013)すなわち、DPD活性は5-FUの消失を左右する指標として、または薬物動態学的バイオマーカーとしての有用性を見いだした。しかしながら、大腸がん化学療法を施行時には、薬効について予測またはモニターするためのバイオマーカーが個別化医療において用量設定のための重要因子となる。そこで、大腸がんの予後予測因子としての好中球/リンパ球比に替わる指標として、各種血球レベルの変化から骨髄抑制予測に有効となるバイオマーカーを探索するべく、5-FU投与後の白血球、好中球、リンパ球、赤血球の血球動態の経時的変化について検討した。その結果、各種血球レベルは、5-FUの用量に応じて異なる推移を示し、特に好中球において顕著であったことから、骨髄抑制の予測の可能性を示唆する結果を得た。本結果から、投与後の採血から5-FU濃度と各種血球数データをえることで、用量変更時の有用な基礎的情報となりえることを見いだした。
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