研究実績の概要 |
5-FUをkey drugとした癌化学療法での個別化医療を目指し、PK/PD理論に基づく定量的治療効果予測システムの構築を目的とした本研究において、①間接的なDPD活性測定としての血漿中ジヒドロウラシル/ウラシル比の時間的変化が血漿中5-FU濃度の推移と相関すること、②生体内DPD活性には日内変動(サーカディアンリズム)が存在し、非活動時においてDPD活性が低下する傾向が認められ、我々のラットでの5-FU投与実験からも、投与時刻の変化による血漿中5-FU濃度の非活動時の上昇傾向を認められたことから、Jiangらの報告とも一致した。(Kobuchi et al., Biol. Pharm. Bull., 34, 365-376, 2013)すなわち、5-FUの消失を左右する指標として、DPD活性の測定意義を見いだし、サーカディアンリズムを組み込んだPK/PDモデルの構築を検討し、実測値と予測値の乖離の有無からモデルの妥当性を評価した。その結果、DPD活性から5-FUのクリアランスが予測可能であることが明らかとなった。一方で、大腸がん化学療法施行時での、薬効の予測およびモニターのためのバイオマーカーについての検討を行ったところ、大腸がんの予後予測因子として、骨髄抑制予測に有効な因子の検出を目的として、各種血球動態の経時的変化について検討した。その結果、5-FUの用量に応じて、特に好中球において良好な相関関係を認めた。さらに、想定される臨床データでは、母集団薬物動態速度的解析法が必要になることから、これまでのラットでのデータを用いて、クリアランス値の推定値から投与量を変化させた5-FUの血漿中薬物動態をシミュレーションしたところ、実測値とほぼ一致する結果が得られた。従って、5-FU による治療時のバイオマーカー測定が5-FUの血漿中薬物濃度と大腸癌の予後予測に重要な意義をもたらすことが示唆された。
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