研究課題
基盤研究(C)
膵臓がんは早期発見が難しく、最も予後の悪いがんの一つとして知られている。また、膵臓がんに対する化学療法は限られており、新たな化学療法の探索が急務の課題である。これまで、腎臓がんに対するPPARγ刺激薬の抗腫瘍効果を明らかにしてきた。そこで、膵臓がんに対するPPARγ刺激薬の抗腫瘍効果を明らかにすることを目的に、研究に着手した。まず、PPARγ刺激薬として、インスリン抵抗性改善薬であるトログリタゾンならびにピオグリタゾンの抗腫瘍効果を検討した。すなわち、ヒト膵臓がん細胞株Panc-1ならびにMIA Paca-2に対する細胞増殖阻害効果を検討した。Panc-1細胞では、ピオグリタゾンの効果は認められなかったものの、トログリタゾンは濃度依存的に細胞増殖阻害効果を示した(IC50=51.3 μM)。MIA Paca-2細胞においてもピオグリタゾンの効果は弱く、トログリタゾンは濃度依存的に細胞増殖阻害効果を示した(IC50=49.9 μM)。いずれの細胞においても、PPARγタンパク質の発現はWestern blotting法により確認できたものの、PPARγ阻害剤GW9662の併用により生存率の回復は認められなかったことから、PPARγ非依存的な効果であることが示唆された。また、トログリタゾン処置によりクロマチン凝集は認められたものの、全カスパーゼ阻害剤Z-VAD-FMK併用により生存率の回復は認められなかったことから、トログリタゾンはアポトーシスを引き起こすものの、カスパーゼを介さないことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度では、PPARγ刺激薬が、膵臓がん細胞に対して抗腫瘍効果を示すのか、示すとすればその細胞死形態や作用機序を明らかにすることを計画しており、ほぼ予定通りに達成していると考えている。また、そのシグナル経路の検討にも着手しており、これも予定通りといえる。
平成25年度では、さらにこの作用がトログリタゾン選択的なのか、あるいは他のPPARγ刺激薬についても検討するとともに、トログリタゾンの作用機序について、特にそのMAPK経路を中心に検討する予定である。一方で、臨床上膵臓がんに対してはゲムシタビンが用いられていることから、ゲムシタビンの有用性を高めるための方策についても検討に着手する。すなわち、他の抗がん剤との併用や、膵臓がんでは糖尿病を発症することから、他の糖尿病治療薬との併用により、ゲムシタビンの有用性が高めることができるのか、できるとすればどのような作用機序なのかについて検討する予定である。
平成25年度では、さらにin vitroの検討を進める予定であるので、細胞培養関連(培地、血清、培養器具等)、シグナル伝達阻害剤等の試薬、測定用の試薬などの消耗品を中心に研究費を使用する予定である。また、癌学会での成果発表や論文投稿料にも一部充当する予定である。
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