研究課題/領域番号 |
24590226
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
内田 享弘 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (70203536)
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研究分担者 |
吉田 都 武庫川女子大学, 薬学部, 講師 (20369028)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 味蕾細胞 / 膜電位 / 膜電位感受性色素 / 硫酸キニジン / クラリスロマイシン / 5-FU / 精神神経疾患薬 / フロースルーセル |
研究概要 |
平成24年度は、味蕾細胞を培養する技術の確立と、膜電位を評価する最適条件の確立について以下の検討を行った。 早期段階で味蕾細胞の活性の保持を検証した。すなわち、味蕾細胞をプレートに播種した時点より、細胞活性が95%保持される時間を、本評価システムの実験継続時間とする条件を確立した。また、細胞保持のための成分の添加と、その成分の膜電位への影響の有無などを事前に確認し、実験条件を決定した。各種味蕾細胞を膜電位感受性色素入りの培地プレートに播種後、代表的苦味物質であるキニーネなどの基質を添加し、発生した膜電位を蛍光色素により計測した。また、当研究室での既報に従い、膜電位を測定して膜電位感受性色素により得られた蛍光強度と乖離がないかを確認する。とくに測定にあたっては、少量の薬物溶液、少量の培養味細胞を用いることで測定が可能であり、連続的にも耐えうるよう、専用フロースルーセルを用いたセル(約1mL)を設計した。フロースルーセルから得られた溶液を、連続的に蛍光測定できるようにHPLC装置へ導入するための装置的な工夫を施した。特に塩酸キニーネおよび硫酸キニジンを薬物として選択し、濃度を変化させて基質選択性の確認をおこなう作業では、薬物の感度・精度について検証をほぼ終了した。両薬剤の濃度としては0.01~0.3mMと濃度が異なる複数試料を作成してそれかの物質単独負荷の場合の応答性、一定間隔をあけての連続の薬物負荷後の投与量依存性を確認できた。塩酸キニーネおよび硫酸キニジンに加えて、クラリスロマイシン、5-FUなどについても別途検討を開始している。特に精神神経疾患については複数の薬剤に絞り、応答性を確認することに成功した。また器具等への薬剤の吸着も無視できる範囲であることも合わせて確認できた。膜電位感受性色素の応答性についても確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
早期段階で味蕾細胞の活性の保持を検証できた。細胞活性が95%保持される時間を、本評価システムの実験継続時間とする条件を確立したことで、実験計画の導入部分に大きな問題がなかった。 各種味蕾細胞を膜電位感受性色素入りの培地プレートに播種後、代表的苦味物質であるキニーネなどの基質を添加し、発生した膜電位を蛍光色素により計測した。また、当研究室での既報に従い、膜電位を測定して膜電位感受性色素により得られた蛍光強度と乖離がないかを確認できたことで、その定量性と妥当性が確認できた。 とくに測定にあたっては、専用フロースルーセルを用いたセル(約1mL)の利用が可能であることを確認できた。 特に塩酸キニーネおよび硫酸キニジンを薬物として選択し、濃度を変化させて基質選択性の確認が、異なる薬物濃度範囲で検証をほぼ終了した。これからの事実と経緯から研究計画はおおむね順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度 研究計画・方法は以下のとおりである。24年度はほぼ予定どおり研究が進捗していることから、以下のとおりほぼ当初案通り進める。 膜電位感受性色素入り培地に培養味蕾細胞を播種後、キニーネ以外のアルカロイド、マクロライド、抗精神薬など、多種類の構造が異なる基質を添加し、発生した膜電位を蛍光色素により定量する。また、当研究室での既報に従い、膜電位を測定し、膜電位感受性色素により得られた蛍光強度と乖離がないかを確認する。実験データについては、化合物群ごとに、データベース化するとともに、膜電位変化と蛍光強度により膜電位変化を詳細に解析する。特に化合物の分子量、塩基性・酸性、分配係数などの指標に基づいて、一定時間での膜電位強度の評価、変化パターン(増強パターン、減衰パターン)の関数化、膜電位強度測定、パターン分析などを用いて多角的に評価を行い、どの指標、パラメータが最も苦味評価に適しているかを統計的に検証する。 26年度の膜電位強度の強化、変化パターンの関数化、パターン分析実験の本試験を目指して、25年度内に予備実験をおこなう。 また、薬物群ごとのデータベースにつながるように、25年度中に薬物の物性についてもデータを纏めておく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度使用予定の研究費139万円のうち、試薬・消耗品費に89万円、国内学会(日本薬剤学会、日本医療薬学会、日本薬学会等)での情報取集・成果発表に50万円を使用する予定である。
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