研究課題/領域番号 |
24590229
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
鈴木 琢雄 国立医薬品食品衛生研究所, 生物薬品部, 主任研究官 (10415466)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 薬物結合抗体(抗体薬物複合体) / 動態 / 受容体親和性 / 抗原親和性 / FcRn / FcγR / イメージング / 安全性 |
研究実績の概要 |
薬物結合抗体(抗体薬物複合体:ADC)は細胞傷害性の強い低分子薬物が結合されているため、有効性・安全性確保には適切な薬物放出を含めた動態の制御が重要である。しかし、薬物結合状態が異なることによる結合特性(FcRn、FcγR等の受容体結合性や抗原結合性)の変化と、細胞内・体内動態への影響には不明な点が多く、安全性上懸念が残る。本研究では、このような動態に関する不明点を明らかにすることを目的とし、細胞内・生体内のADC動態解析法を開発して解析を行う。 本年度は、これまでに作製した、化合物(蛍光色素)をアミノ基に結合させたADCモデルに加え、化合物をチオール基に結合させたADCモデルを作製し、表面プラズモン共鳴法を用いてFcRn結合性を解析した。その結果、化合物をアミノ基に結合させた場合と同様に、化合物をチオール基に結合させた場合も、FcRn親和性が低下した。また、抗Hisタグ抗体をキャプチャ-用分子として用い、Hisタグを付加した抗原(HER2,EGFR)と抗体の結合性を解析する系を構築し、ADCモデルの抗原結合性を評価した。抗HER2抗体(トラスツズマブ)は化合物をアミノ基に結合させると抗原結合性が低下したが、抗EGFR抗体(セツキシマブ)は化合物の結合による抗原結合性の低下は認められなかった。以上の結果を含め、これまでに作製した複数のADCモデルより、抗体への化合物の結合と動態関連分子との結合特性の変化の関連性が明らかとなった。次年度は、これまでに構築した評価系を用いて、これらの結合特性の変化と細胞内・生体内の動態との関連を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに、化合物(蛍光色素)放出により蛍光共鳴エネルギー遷移(FRET)効率が変化するようデザインした各種ADCモデルの作製を行った。また、既に構築済みの手法と合わせ、抗原及び受容体(FcRn、FcγR)に対する結合性解析系を用意し、各種ADCモデルの動態関連分子結合性を解析した。また、ADCモデルの動態及び化合物放出性を評価するための細胞内動態解析法・体内動態解析法も構築し、おおむね計画通りに進行していたが、健康上の事由により若干の遅れが生じた。そのため、研究期間を1年延長することとした。
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今後の研究の推進方策 |
構築した共焦点レーザー顕微鏡を用いた細胞内動態解析法等を用い、主に以下の3点について検討を行う。①ADCは通常の抗体と同様、血管内皮細胞等にピノサイトーシスにより非特異的に取り込まれると考えられる。FcRn結合性の変化が、非特異的な薬物放出に与える影響について検討する。②標的分子発現細胞において、標的分子やFcRnとの結合性変化が薬物放出に与える影響について検討する。③樹状細胞等においてFcRnやFcγR親和性の変化が薬物放出に与える影響について検討する。 また、化合物結合による抗原結合性、Fc受容体結合性等の違いが体内動態に与える影響を明らかにするために、構築したADCの体内動態解析法を用いた解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
長期の怪我により、本研究課題を予定通りに遂行することが出来なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究費は主に、①抗体医薬品や抗体医薬品に結合させる化合物、及び、結合に用いる試薬、②顕微鏡観察に用いる細胞培養の培地、ディッシュ、③体内動態解析に用いる動物等の購入に使用する予定である。
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