薬物結合抗体(抗体薬物複合体:ADC)は細胞傷害性の強い低分子薬物が結合されているため、有効性・安全性確保には適切な薬物放出を含めた動態の制御が重要である。しかし、薬物結合状態が異なることによる結合特性(FcRn、FcγR等の受容体結合性や抗原結合性)の変化と、細胞内・体内動態への影響には不明な点が多く、安全性上懸念が残る。本研究では、このような不明点を明らかにするための手法の確立、及び確立した手法を用いた解析を実施した。 標的細胞への薬物輸送に用いることが可能な抗HER2抗体と抗EGFR抗体等に、化合物として各種蛍光色素やビオチンを結合させADCモデルを作製した。表面プラズモン共鳴法を用いた解析法を確立し、作製したADCモデルについて、FcRn、FcγR、抗原結合性への影響を調べたところ、化合物の結合部位(リシン残基、システイン残基)に関わらず、多くのケースで影響が認められた。また、蛍光色素を結合させたADCモデルを評価し、細胞内動態解析に適切と考えられる蛍光色素を選択した。動態解析法としては、抗体に2種類の蛍光色素を組み合わせて結合したFRET型ADCモデルを作製し、共焦点レーザー顕微鏡を用いたacceptor photobleaching法や動物用イメージング装置を用いたspectral unmixing法で評価することにより、動態と化合物放出性(抗体の分解による化合物放出)を評価可能であると考えられた。なお、最終年度は適切であると考えられた条件で作製したADCモデルについて細胞内動態解析等を行った。
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