研究課題
手根の運動には屈曲、伸展、内転、外転およびこれらの組み合わさった描円があり、360°どの方向にも動きうる。運動の主力となる筋として、手根伸筋群(長橈側手根伸筋:ECRL,短橈側手根伸筋:ECRB,尺側手根伸筋:ECU)と屈筋群(橈側手根屈筋:FCR,尺側手根屈筋:FCU)がある。著者らはこれまで、これら5筋の神経筋電気刺激(ENS)による単独収縮で、手根にそれぞれ別方向の運動や力が誘発されることを示し報告してきた。本研究では、上記5筋のうち隣り合う作用(誘発される運動や力の方向)を示す2筋に対して、以下の2つの刺激波形を用いて組合せENSを試みた。ENSには幅0.2 ms、振幅0~20 Vの矩形波を用い、周波数は20 Hzとした。また、刺激強度は、収縮閾値を0%、最大収縮が得られる強度を100%とした。同期刺激:刺激強度を0%から、一方の筋に対しては100%、他方の筋には0~100%まで同期させ て上げる。交代刺激:一方の筋に対して、刺激強度を0%から100%に上げて100%を維持、次いで、他方の筋に対し、0%から100%に上げて100%を維持、その後一方の筋を100%から0%まで下げてから、他方の筋を100%から0%まで下げる。その結果、2つの筋それぞれ単独の刺激強度100%のENSで誘発される手根の運動をM1とM2、力をF1とF2とすると、同期刺激により、手根のM1とM2の間の方向の曲げ運動、F1とF2の間の方向の曲げ力、交代刺激により、M1とM2の間を結ぶ描円運動、F1とF2の間を結ぶ円弧力が誘発できることが示された。以上の結果は、組合せENSにより手根のあらゆる方向の運動や力が制御できる可能性を示唆するものである。また、これらの結果は、機能的電気刺激などによる麻痺肢の動作再建への応用が期待できる。
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