研究実績の概要 |
ゼブラフィッシュからクローニングし配列決定したPcdh10aについて、in situハイブリダイゼーションによる発現解析とドミナントネガティブ変異体による機能解析を行い、Pcdh10aが目の発現に関わっていることが示された。 in situハイブリダイゼーションでは、12hpfに頭側端と体幹外腹側にPcdh10aの発現が始まり、18hpfには眼原基、終脳、間脳、視蓋、脊髄背側の近傍に、24hpfには水晶体、耳胞、終脳、間脳、中脳被蓋、視蓋尾側に発現した。水晶体での発現は36hpfを過ぎて減衰したが、耳胞では36hpfに最大となり42hpfを過ぎて減衰した。48hpfには脳に広くびまん性に発現し、以降減衰した。 Pchd10aのドミナントネガティブ変異体を作成して胚に強制発現させると、眼の形成異常が有意に多くみられた。アンチセンスMorpholinoを2種類使い、胚でPcdh10aをノックダウンしても、同様に眼の形成異常がみられた。これらのことから、Pcdh10aが眼の形態形成に関与していると考えられた。体幹の異常も多くみられたが、発生初期にPcdh10aが発現することを反映すると考えられた。 このようなレンズにおける発現および機能は、アイソフォームのPcdh10bにはみられない。また、レンズにおける発現を示す接着因子として、他の実験動物ではN-カドヘリンを除いて知られていない。これらのことから、ゼブラフィッシュのPcdh10a/10bについて、系統発生学的な考察を試みた。実際、ゼブラフィッシュのPcdh15でもアイソフォームそれぞれの機能の系統発生的分化が知られている(Seiler, C., et al. 2005. Development, 132(3), 615-623.)。ゼブラフィッシュPcdh10aと同様の発現・機能をもつプロトカドヘリンは他の実験動物で報告されていないことから、この系統発生的分化は硬骨魚類のゲノム重複で生じた現象と推測された。
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