研究課題/領域番号 |
24590233
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
長島 寛 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40435665)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 比較解剖 / 形態形成 / 比較発生 / 進化形態 / 対鰭 / ボディプラン / 頸部 |
研究概要 |
ヤツメウナギの舌筋群が羊膜類の舌筋のように移動性の筋原基からできる事を確かめるため、筋前駆細胞の移動に関わるMET受容体の阻害剤をヤツメウナギ胚に添加し、筋原基の移動を確かめたところ移動が阻害されていたものがあった。よってヤツメウナギの舌筋群は羊膜類でのそれと同様にHGF-MRTシグナリング系を用いて形成されているのかもしれない。ただ鰓腹側部分および体節腹側にある筋前駆細胞でHGF、METオーソローグの特異的な発現が見られなかった。これはまだ単離されていないヤツメウナギにおけるパラローグがこのシグナリング系に関与している可能性を示唆している。 サメの舌筋、鰭筋の発生に関しては、これらが羊膜類のそれと異なり組織学的に分化した筋細胞の集団である筋節の伸長として形成されることを既に確かめたが、筋形成に関わる遺伝子の発現を確かめたところ、筋芽細胞の分化に関わるMyf5が発現していただけではなく、羊膜類にあっては未分化な筋前駆細胞に発現するLbx1も発現していた。このような遺伝子の発現形式は羊膜類、真骨魚類、ヤツメウナギでも観察されていない。今後これらの遺伝子が同じ細胞で発現しているのかどうかを確かめる必要があるものの、この結果はこれまで移動性の筋前駆細胞の「マーカー」として用いられて来たLbx1の意義付けがそのように単純なものではない事を示している。またサメにおいては鰭筋、舌筋の形成機構がサメの進化過程で二次的に変成してしまったのかもしれない。 メダカの腕神経叢の発生を免疫組織染色法により観察したところ、その吻側の枝は舌下神経の分枝として形成されていた。対鰭がまだ進化していないヤツメウナギには腕神経叢がなく舌下神経しかない。従って、腕神経叢は進化的に舌下神経の枝分かれとして作られた可能性がより強く示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヤツメウナギの舌筋の形成過程での組織観察および胚環境との位置関係の特定および総排泄腔の筋形成の観察がまだなされていない。またエイ胚の入手を行ったものの、まだその鰭筋、舌筋の形成過程の観察がなされていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度はメダカの舌筋群、胸鰭筋、肩帯の形成を細胞系譜解析法によっ明らかにし、舌下神経および腕神経叢の神経核を標識してその位置が重なる事を示して、腕神経叢が舌下神経の重複として形成されたことを確かめる。またニワトリ-ウズラキメラ法によって頸部の結合組織の分布を明らかにし、舌筋群、前肢筋群との位置関係を調べ、メダカのそれと比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に実験用の消耗品、文献などの資料収集費、学会での情報収集費、総説執筆のための英文校正費を予定している。
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