研究課題
1)C末端側が欠損した変異APC(APC1638T)を発現するマウスの腸上皮の細胞分化と細胞動態の解析を行った。①APC1638Tマウスの小腸の近位・中央・遠位のすべての部位において、陰窩~絨毛の長さが野生型よりも長かった。②APC1638Tマウスの小腸の陰窩~絨毛の腸上皮細胞数は野生型よりも多かった。しかし、陰窩・絨毛100μmあたりの腸上皮細胞数には有意差はなかった。③APC1638Tマウスの大腸の陰窩の長さと、陰窩を構成する腸上皮細胞数および100μmあたりの腸上皮細胞数は、野生型と同じであった。④BrdUを腹腔内投与し、24時間後に腸上皮におけるBrdUを取り込んだ細胞の位置を調べると、APC1638TマウスにおいてBrdU陽性細胞が絨毛先端に向かって、より長い距離を移動していた。⑤これらの結果より、APC1638Tマウスの小腸上皮細胞の増殖能が高いことが示唆された。また、APC1638Tマウスでは、小腸の栄養吸収面積が広いにもかかわらず体重が軽いことより、栄養吸収能が劣っていることが示唆された。2)APC1638Tマウスの骨格系の解析を行った。マイクロCTおよび走査電顕による観察、および全身骨染色・軟骨染色による観察によって、APC1638Tマウスの骨格系に短肢、亀背、骨化不全等の異常が認められた。3)APC1638Tマウスの歩行を動画撮影して歩行パターンを解析した結果、APC1638Tマウスの歩行では四肢協調性が欠如していることがわかった。4)APC1638Tマウスの皮膚を組織観察(HE染色)し、Hair Cycle Scoreの測定を行った結果、組織学的には差異は見られなかったが、hair cycleの変化が認められた。これらの研究成果はいずれも、APC蛋白質の発生学・形態形成学上の新規機能を示す新知見である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Molecular Brain
巻: 7 ページ: 21-34
10.1186/1756-6606-7-21