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2014 年度 実施状況報告書

3次元形態形成過程における、細胞極性制御に関わる分子ターゲットの同定

研究課題

研究課題/領域番号 24590237
研究機関横浜市立大学

研究代表者

中谷 雅明  横浜市立大学, 医学部, 助教 (70422095)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード発生学 / 形態形成学 / 細胞極性 / 平面極性 / リン酸化プロテオミクス / ノックアウトマウス
研究実績の概要

本研究は、形態形成過程において3次元細胞極性制御に関わる、具体的な分子ターゲットを同定することを目的とし、薬剤誘導性遺伝子ノックアウトシステムを用いて、形態形成に関連する遺伝学的相互作用の本態を、タンパク質の活性調節レベルで解明することを本研究の目標とした。
本研究では、薬剤誘導性遺伝子ノックアウトシステムを用いたマウスの胚発生過程での形態遺伝学的解析から、aPKC遺伝子(aPKC-PAR系)とDaam1遺伝子(Wnt-Daam-PCP系)の間の遺伝学的相互作用が、統計学的に有意であることを立証した(Additive Genetic Interaction)。免疫沈降法を用いた生化学的な解析では直接のタンパク質相互作用を認めなかったので、介在する分子の検索を行い同定した(Physical Interaction)。さらに機能的な相互作用を検討する目的でアフリカツメガエル胚を用いた解析により、機能的な相互作用を検出することに成功した(Functional Interaction)。
これとは別に、aPKCコンディショナル・ノックアウトマウス由来の細胞株を樹立し、薬剤誘導下で遺伝子ノックアウトしてリン酸化プロテオミクス解析を行うことにより、細胞極性を直接制御する下流タンパク質の検索を行った。その結果、約20の候補タンパク質を同定し、複数回の検討から2種類にまで絞ることが出来た。さらに、発生・分化過程におけるaPKCの機能解析の目的でES細胞株の樹立試み、これも成功した。今後はaPKC遺伝子とDaam1遺伝子をダブルノックアウトすることにより、細胞遺伝学的手法を用いた検討を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、細胞極性と一括りに表現される、「1細胞の極性と多細胞間における極性」に何らかの相互作用があるか検討した。この問いに対し、分子生物学、生化学、発生学、遺伝学、初代培養細胞技術、不死化細胞株樹立技術、リン酸化プロテオミクス解析技術を集約的に用いることにより解析を行っている。
これまでの我々の研究成果から1細胞極性を制御する遺伝子としてaPKCを、多細胞間における極性(平面極性:PCP)を制御する分子としてWnt-PCP経路に関わるDaam1を同定し、遺伝子ノックアウトを行うことにより、表現型を解析してきた。その結果、両遺伝子共に胎生致死となることが確認されている。胎生致死の表現型を示す場合、細胞生物学的、発生生物学的、生化学的解析が困難であるが、薬剤誘導性遺伝子ノックアウトシステムを導入することにより解析可能な実験系を構築した。この実験系を用いることにより、「1細胞の極性と多細胞間における極性」の具体的な関わりを検討することが可能となった。本研究では遺伝学的、生化学的、機能的な相互作用を見いだすべく検討を重ねてきた結果、aPKC遺伝子とDaam1遺伝子の間に相互作用が存在し、かつ両者を結びつける介在分子の同定に成功した。さらに本研究開始時には困難が予想された、下流の標的分子を見出す為の実験系の構築にも成功し、具体的な下流因子の同定にも成功した。
これらの成果は予想を遙かに上回る結果である。

今後の研究の推進方策

胚発生過程の形態遺伝学的解析の成果を論文発表するために必要な、統計学的データの収集は終了した。また、結合タンパク質の検索と、構造生物学的解析の結果などから、aPKCとDaam1の間に仲介すると考えられる候補分子の検索を行い、遺伝学的相互作用を裏付ける細胞生物学的・発生生物学的・生化学的な検討もほぼ終えて、成果を発信する為の論文を執筆中である。
樹立が成功したES細胞株および培養細胞株については、遺伝子ノックアウトの有無の条件でのサンプルを調整し、形態学的解析、プロテオミクス解析が進行中である。研究のさらなる発展の為に、引き続き薬剤誘導性遺伝子ノックアウトシステムと不死化細胞株樹立技術、ES細胞株樹立技術を用い、分子生物学的・生化学的・発生学的解析やリン酸化プロテオミクス解析に耐える新たな実験系の構築の試行を継続する。

次年度使用額が生じた理由

本研究では遺伝子改変動物から、上皮細胞株およびES細胞株を樹立し、3次元形態形成過程における分子ターゲットの同定を試みている。上皮細胞株については予定通り樹立が成功してプロテオミクス解析の結果まで得ているが、ES細胞株については1種類について成功したのみで、胚採取源となる目的遺伝子型の雌マウスの取得に困難を極めているため、繰越額が生じた。確率的な問題なので時間が解決するため、引き続き継続中である。

次年度使用額の使用計画

樹立した細胞株のさらなる解析と、ES細胞株の樹立に必要な試薬・消耗品類(物品費)の購入に用いる予定である。特に細胞培養用試薬は使用期限がある上に高価な為、効果的に使用出来るように補助期間を延長して使用する必要がある。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [学会発表] 上皮細胞株の樹立法とその解析2014

    • 著者名/発表者名
      中谷雅明、森山佳谷乃、浅田希央、井野洋子、平野久、大野茂男
    • 学会等名
      新学術「上皮管腔形成」若手主催研究会「In vitro培養系を用いた上皮管腔構造の解析検討会」
    • 発表場所
      浜松町センタービル(東京)
    • 年月日
      2014-11-28
  • [備考] 横浜市立大学・医学部・分子生物学教室 ホームページ

    • URL

      http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~ohnos//Japanease/indexJ.html

  • [産業財産権] 子宮頸がんの予防を目的とした前がん病変の進行を予測する検査方法2014

    • 発明者名
      大野茂男、水島太一、宮城悦子、佐藤美紀子、平原史樹、中谷雅明
    • 権利者名
      大野茂男、水島太一、宮城悦子、佐藤美紀子、平原史樹、中谷雅明
    • 産業財産権種類
      特許特願2014-019201
    • 産業財産権番号
      特願2014-019201
    • 出願年月日
      2014-04-01

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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