研究課題/領域番号 |
24590238
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
山岸 敏之 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60255122)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 発生学 / 心臓 |
研究概要 |
心内膜床は、将来の中隔や弁を形成する原基であり、胚心臓の房室管(心房と心室の間)および流出路に形成される。心内膜床は、原始心筒の心内皮細胞が心筋細胞からのシグナル分子により間葉に分化し、形成される(上皮-間葉形質転換)。申請者は心筋からのシグナル分子としてBMP(骨形成因子)を同定したが、間葉形成にはBMPの他に wntシグナル(βカテニンを経由)が必要であることを明らかにしつつある。しかし、心臓に発現する既知のwntは間葉形成を誘導しなかった。一方、分泌因子Rspo3はwntシグナルを活性化する可能性が指摘されている。本研究では、心内皮細胞の間葉への形質転換におけるRspo3の役割を明らかにすることを目的にしている。本年度はニワトリRspo3のタンパク質発現実験を行うため、ニワトリRspo3遺伝子の全アミノ酸をコードする領域のクローン化を行い、塩基配列を決定した。さらにRspo3遺伝子を発現ベクター(pCS2+)に組み込んだ。また、Rspo3のニワトリ胚心臓での発現の詳細を明らかにするためin situ ハイブリダイゼーションをおこなった。これまでに、マウス胚では房室管領域の心筋細胞に発現することが報告されている。しかし、ニワトリ胚心臓において、Rspo3は心内膜床の心内皮と間葉に発現していたが、心筋細胞での発現は観察できなかった。そこでRspoファミリーの属するニワトリRspo2のクローニングも行い塩基配列を決定し、発現ベクター(pCS2+)に組み込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、Rspo3遺伝子のゲノムへの導入にはレトロウイルス法を用いる予定であった。しかし、レトロウイルスによる遺伝子導入はタンパク質の発現までに時間がかかり、導入タンパク質の作用を調べたい時期に十分な活性を得られない可能性が考えられた。 そのため、近年ニワトリ胚で使われているトランスポゾンを用いたゲノムへの遺伝子導入法に変更し、その準備をしている。そのため当初の予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1.Rspo3ゲノムへの遺伝子導入にはトランスポゾンを用いた遺伝子導入法を試みる。 2.Rspo3のさらに詳細な発現を調べる。またRspo2の発現も明らかにしたい。同時に他のRspoファミリーに属する分子のクローニングを行いその発現を明らかにすることを計画している。 3.心内膜床形成でのRspo3の関与を明らかにするため、機能阻害実験を行う。機能阻害は簡便性と有効性から、合成siRNAを使用する。培養液中にsiRNAを加え48時間培養し、ゲル内部の間葉の有無で形質転換を判定する。また、これらの細胞について、内皮細胞のマーカー分子(細胞接着分子[VE-カドヘリン])や間葉のマーカー分子(細胞骨格[α平滑筋アクチン]など)の増減をRT-PCR法や免疫組織化学法などにより調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験用動物として受精鶏卵を購入する。さらに、Rspo3の機能阻害実験に用いるsiRNA、細胞培養に使用する培地・試薬・使い捨ての培養ディッシュ等の消耗品、分子生物学的実験・細胞生物学的実験に使用する試薬・消耗品等の購入を予定している。次年度は細胞レベルでの観察をしたいので、組織標本を作製するためのミクロトームの購入を検討している。また研究成果(途中経過)の発表および情報収集のために海外の学会への参加を検討している。
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