原腸陥入を中心とする「原腸胚形成」は多細胞動物の形づくりにおいて極めて重要な現象であるにもかかわらず、現在まで、そのメカニズムの実質的な解明が進んでいない。本研究課題では、単離胚細胞がみせる振る舞いの解析を通して、原腸胚形成のしくみを明らかにする目的で研究を行った。前年度までの本研究課題による研究により、原腸陥入が起きる時期に両生類の胚細胞を単離すると、予定外胚葉細胞では自律的なブレッブ形成と、その周転運動がみられ、予定中胚葉および内胚葉細胞の多くは自律的にシリンダー状に細長く伸長すること、および、それらがカルシウムイオンを介した細胞骨格の再構築により制御されていることが示唆された。本年度の研究では、「自律的かつ胚葉特異的な細胞運動が原腸胚形成に果たす役割」についてさらに解析を進めた。その結果、予定外胚葉細胞でみられる細胞運動は、ジヒドロピリジン受容体とリアノジン受容体によるカルシウムシグナルを介した細胞骨格(アクトミオシン系)の再構築により、胚表面での外胚葉組織の覆い被せ運動に関与し、また、予定中胚葉および内胚葉細胞でみられる細胞運動は、イノシトール3リン酸受容体によるカルシウムシグナルを介した細胞骨格(アクトミオシン系)の再構築により、中胚葉および内胚葉組織の胚内への陥入運動に関与していることが示唆された。
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