研究課題
摂食調節神経ペプチドの1つであるガラニン様ペプチド(GALP)は摂食抑制およびエネルギー代謝調節にかかわっている。GALPのニューロンネットワークの解明はとても遅れている。これまで作出してきた遺伝子改変マウスを用い、脳全体のGALP産生細胞およびその求心性ニューロンの起始部位の同定を行い、創薬展開につながることを目的とした。当該研究ではGALPニューロンを形態学的に解析するためにCre-loxPシステムによってGALP発現細胞特異的に逆行性輸送機能を付加した緑色蛍光タンパク質(GFP)とβ-ガラクトシダーゼを共発現するトランスジェニックマウスを用いた。このマウスを解析することで、GALP産生細胞は僧帽細胞層、蓋ひも、梨状葉、視床下部室傍核、弓状核、海馬、青斑核、小脳プルキンエ細胞に分布していた。GALPニューロンを支配しているニューロンが集まる神経核は視床背側前核、内側手綱核、中隔、内側視索前野であることを観察した。最終年度はGALP産生ニューロンは嗅覚路の神経核に存在していることから、この嗅覚路を活性化させることで、GALPの何らかの情報が大脳辺縁系あるいは間脳に伝わる可能性がある。そこで当教室で確立したGALP点鼻投与法によって、神経の活性化部位をcFos発現で調べた結果、摂食調節に関わる外側視床下部、背内側核と弓状核で、対照群に比べて多く発現していた。当該研究ではマウスにおいてGALP産生ニューロンは弓状核以外にもいろいろな神経核に分布していることを明らかにした。嗅覚路を構築する神経回路網、学習・記憶にGALPニューロンが存在していることから、GALPは摂食やエネルギー代謝だけでなく、嗅覚や学習・記憶にも関与しているという新しい可能性を明らかにした。GALPの点鼻投与はその刺激を視床下部まで伝えることから、効率の良いペプチド投与法である可能性が示唆された。
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