研究課題
最終年度はリンパ管小孔への癌転移の予測因子とその病態について検討した.多重ロジスティック回帰分析の結果,肺靱帯リンパ管小孔への癌転移の予測因子となったのは静脈角リンパ節転移と肺靭帯以外の胸膜転移であり,横隔腹膜リンパ管小孔への癌転移の予測因子となったのは上腹部傍大動脈リンパ節転移と横隔腹膜以外の腹膜転移であった.通常,リンパ管小孔よりも下流に位置すると考えられている静脈角リンパ節や上腹部傍大動脈リンパ節への癌の転移が,リンパ管小孔への癌の転移を予測する独立した因子となったことは興味深い.というのも,リンパ管は集合リンパ管レベルになると弁を有し,生理的条件下では逆流を防止する機能を持っていると考えられているからである.したがって,癌細胞の逆行性リンパ行性転移,あるいは両方向性リンパ行性転移を成立させる解剖学的基盤ならびに病理学的基盤についてさらなる検討を加えた.その結果,ヒト中縦隔・後縦隔領域および上腹部傍大動脈周囲領域のリンパ管は複雑なChainを形成しており,必ずしも一方向性のリンパ流ではないこと,また,リンパ管小孔においては,両方向性の物質移動を可能にする構造が存在していることが明らかとなり,これらのことが各領域における癌の両方向性リンパ行性転移を成立させる解剖学的基盤の一つとなると考えられた.さらに,癌のリンパ管侵襲に引き続いて起こる下流リンパ管内圧の上昇やリンパ管の過度な拡張や収縮障害,癌細胞のリンパ管内皮細胞への癒着による弁の閉鎖不全や弁破壊等が,弁を有するリンパ管における逆行性リンパ行性癌転移を成立させる病理学的基盤になると考えられた.
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