研究課題/領域番号 |
24590243
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
曲 寧 東京医科大学, 医学部, 講師 (70527952)
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研究分担者 |
伊藤 正裕 東京医科大学, 医学部, 教授 (00232471)
善本 隆之 東京医科大学, 医学部, 教授 (80202406)
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キーワード | マウス / 精巣 / 抗がん剤 / 精子形成 / 免疫寛容 |
研究概要 |
本研究の目的は、免疫正常マウスにラット精原細胞を移植し、生殖細胞の生着(寛容)および拒絶(排除)に関する精巣内微小環境の要因を調べことである。平成24年度は、ブスルファン処置したマウスの免疫機能の解析によりブスルファンの免疫抑制への影響を調べた。ブスルファン投与後2日目では免疫機能は低下するが、ブスルファン投与後60日目までにはコントロールと比べ有意な差は認めなかったことから宿主の免疫はブスルファン投与後60日目には、ほぼ回復していることが明らかとなった。一方、ブスルファン投与後2日目には精巣組織学的な変化を認めなかったが、ブスルファン投与後60日目では顕著な精子形成障害が認められた。平成25年度は抗癌剤投与における精巣内微小環境の変化と精子形成の機構について解析した。ブスルファンを投与したマウスの精細管内Tumor necrosis factor-a (TNF-a)の増加と精巣間質にマクロファージの浸潤がみられ。同時に精子形成を回復させる条件を検討し、ブスルファンにより精子形成障害を回復方法が確立した。また精子形成回復したマウスの精巣には精細管内TNF-aと精巣間質にマクロファージの浸潤が低減したことが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは、以前よりマウスを用いて免疫性精子形成障害の機構や治療応用の可能性について検討を行ってきている。また近年、ラット精原細胞を抗癌剤ブスルファンで処理した免疫正常マウスに移植したところ、ラット精子形成と共にマウス精子形成の増加も見られ、さらに、ラット精原細胞の生着が見られなかったマウスでも、マウスの精子形成が亢進していることを見出した。これよりラット精子形成に伴いラットとマウスに共通の精子形成促進因子が産生されている可能性を見出した。上述の申請者らの最近の結果を基に、精子形成誘導に関する精巣内微小環境の要因を調べ、免疫寛容の誘導機構を解明し精子形成の促進因子の同定を目的とした。本年度の研究結果から精子形成を回復させることにより精細管内TNF-aと精巣間質にマクロファージの浸潤が低減することが明らかとなった。この結果は障害した精子細胞によって誘発された精巣内免疫環境の変化と精巣炎のメカニズムの解析に新しいデータであり、精巣内微小環境での免疫寛容と精子形成の機構解明に有用と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
精子形成を促進する因子の同定するため、ラット精原細胞生着したマウスとしなかったマウス、ブスルファン処置したマウスと精子形成回復させたマウス、コントロールマウスの精巣からRNAおよび蛋白を抽出し、マイクロアレイや2次元電気泳動後スポット蛋白抽出と質量分析解析により差異のある分子を網羅的にスクリーニングし同定を試みる。また同定した精子形成促進因子の効果を調べるため既に確立しているマウス精子幹細胞のin vitro培養法(Kanatsu-Shinohara et al. Biol. Reprod. 69, 612-6, 2003)により、ラット精原細胞を移植後のマウスと精子形成回復させたマウスの精巣をコラゲナーゼ処理で部分的にバラバラにした細胞と残りの細胞塊を共存させて培養し、精子形成まで分化誘導されるかの検討を行う。もしも、その精子形成促進因子が同定できていれば、その因子を単独で培養系に入れてその効果を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
端数分のため 平成26年度は総額1000千円の研究経費を計上した。その積算根拠として、実験動物のためのマウス代(食餌含)200千円を計上した。さらに、消耗品としてプラスチック・ガラス器具100千円、培養関連試薬200千円、分子生物・生化学関連試薬および免疫・組織学関連試薬および培養関連試薬500千円を計上した。
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