研究概要 |
ニワトリ胚を用いた段階的なプラコード特異性の形成機序の解明を目指す。神経板の外植片培養により上皮様細胞が得られており、このデータをまとめるために①分子マーカーの数を増やしてRT-PCR実験を行い、また②透過型電子顕微鏡 (TEM) により微細形態を調べた。そしてタンパク質濃度と細胞の性質との関係を調べるために、③培養液に加えるタンパク質の濃度検証をqPCRにて行った。 ①陰性対象の細胞群 (N2のみ) において観察された神経板分子マーカーSox1, -2, -3, NCAM, Neurogの発現量は、陽性対象の細胞群 (N2とBMP4とFGF2を加えたもの) ではどれも減少した。神経堤マーカーZic1, Msx2, AP2, Snail2は、N2のみの陰性対象と比べ、N2とBMP4を加えた別の陰性対象の細胞群では若干発現量は多いが、陽性対象では減少した。神経板境界領域マーカーSix1, -4, Eya1, -2の発現量は、陰性対象に比べ陽性対象では全て高かった。そしてDlx5を含む表皮外胚葉マーカーGATA3, Keratin7, -19は、陰性対象と比べ陽性対象での発現量はどれも非常に高かった。 ②陰性対象 (N2とBMP4) の神経板外植片から広がる細胞は小さく個別であり、TEMによりfilopodiumやlamellipodiumが多く観察され、従来の神経堤細胞になる知見と矛盾しない。一方、陽性対象の神経板外植片から広がる細胞群の周辺部では、敷石状に大きな細胞が隣り合い、その境界には上皮細胞に特有のdesmosomeが幾つも観察された。 ③神経板の培養液にそれぞれの濃度のタンパク質(BMP4: 20ng/μl; FGF2: 0-40ng/μl)を加えて培養した細胞を採集し、分子マーカーDlx5, GATA3, Keratin19, Snail2, Sox2を用いてqPCRを行った。今回はBMP4濃度を一定にしFGF2の濃度を振って検証したのだが、FGF2は最小濃度 (0.4ng/μl) でもそれなりの分子マーカーの発現量が見られ、またおおよその傾向が見られたものの、データの精密さを欠く結果となり何らかの対策が必要と考えられた。
|