研究課題/領域番号 |
24590245
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
島田 ひろき 金沢医科大学, 医学部, 講師 (60278108)
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キーワード | 発生・分化 / 脳・神経 / 細胞・組織 |
研究概要 |
平成24年度までに,母親白血病抑制因子(LIF)-胎盤副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)-胎仔LIFシグナルリレーによって誘導されたLIFが,胎仔大脳皮質内のインスリン様増殖因子(IGF1およびIGF2)を誘導し,これらが線維芽細胞増殖因子(FGF2)と協調して神経幹細胞の増殖を相乗的に亢進させることを,in vivoおよびin vitroで明らかにしてきた。 これらを踏まえ,25年度は以下の研究をおこなった。 1.このシグナルリレー経路を変化させて実際に大脳皮質形成が影響を受けるかを検討した。経路を人為的に変化させるモデルとして疑似ウィルス感染実験をおこなった。妊娠中期(胎齢12.5日)の母親に疑似ウィルス物質polyriboinosinic-polyribocytidylic acid (poly I:C 20 mg/kg)を投与したところ,胎盤でのACTH誘導に抑制がかかり,胎仔でのLIF産生が減少した。また,最終的に胎仔大脳皮質の形成が増殖速度および細胞数とも抑制された(ステレオロジー解析によるEdU取り込み測定)。 2.IGFによる大脳皮質形成に及ぼす酸素濃度の影響を検討するため,脳室内酸素濃度の経時的な測定をおこなった。ニードル式マイクロ酸素濃度計を用いて胎齢12~20日の胎仔脳室内の酸素濃度を測定したところ,18日齢以降の胎仔では皮質の増大によって脳室内間隙が減少し,測定が困難であった。また,12~16日齢の脳室内酸素濃度は14日以降に上昇傾向にあったが,値が不安定なため,統計的に有意な結果は出ていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では,シグナルリレー経路を変動させて大脳皮質形成への影響を見る際,LIFまたはIGFを直接胎仔脳室内に投与するモデルを行う予定であったが,臨床的な意義を持たせるため,母親のウィルス感染モデルであるpoly I:C投与法を行った。このときのIGF変化についてはまだ測定していない。また,計画にあったIGF受容体(IGF1R, IGF2R)および,IGF結合蛋白質(IGFBPs)の変化をまだ測定していない。 脳室内酸素濃度も確実に安定した測定方法になっておらず,感度の異なる別のニードルでの測定を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1.LIF-ACTH-LIFシグナルリレー変動時のIGF1RおよびIGF2Rの局在,量の違いを免疫蛍光法で解析する。それら受容体のリン酸化の変化についても免疫蛍光法で同様に解析する。さらに採取したCSFおよび脳組織についてIGF1R, IGF2R, IGFBPsの蛋白量,mRNA発現量を測定し解析する。 2.胎仔脳内酸素濃度の経時的測定を25年度と別種のニードル式酸素プローブを用いて測定する。また,脳組織内酸素濃度をイミダゾール系の低酸素プローブやミトコンドリア酸素消費プローブ等を用いて組織学的に解析する。
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