研究課題
平成25年度までに,以下のことを明らかにしてきた。1.母親白血病抑制因子(LIF)-胎盤副腎皮質刺激ホルモン-胎仔LIFシグナルパスウェイによって誘導されたLIF が,胎仔大脳皮質内のインスリン様増殖因子(IGF1およびIGF2)を誘導し,これらが線維芽細胞増殖因子(FGF2)と協調して神経幹細胞の増殖を相乗的に亢進させる。2.母体のウィルス感染による免疫反応によって,このシグナルリレー経路の破綻が起き,胎仔大脳皮質形成が抑制される。平成26年度は,この大脳皮質形成亢進期に及ぼす酸素濃度の影響を検討するため,以下の研究をおこなった。ニードル式マイクロ酸素濃度計を用いてLIFシグナルパスウェイ発動期である胎齢13~16日の胎仔脳室内の酸素濃度を測定したところ,酸素濃度は14日以降に1.6~1.7倍に増加した。この時期は,我々がこれまでに見出したLIFシグナルパスウェイが有核赤血球の脱核を促して成熟赤血球の産生を亢進する時期と一致する。このことからLIFシグナルパスウェイは酸素要求性の高い大脳新皮質の形成と酸素供給を協調させるシステムであることが推測された。また,IGFは神経幹細胞の分裂促進だけではなく,分裂後ニューロンの糖代謝やRedox感受性転写因子,酸化ストレス対応因子の発現調節にも関与することから,LIFシグナルパスウェイがIGFを介して胎児大脳新皮質のエネルギー代謝機構を低酸素に対応したものから酸素依存的なものに変化させていることが予想された。これらを明らかにするため,これら因子の免疫組織学的解析を試みた。先ず,大脳皮質全域にわたるこれら因子の局在を明らかにするため,胎仔の透明化法を検討した。その結果,抗原性を保ちながら,これまで報告されてきた方法に優る透明化方法を開発した。現在,低酸素プローブおよび酸化ストレス対応因子の免疫組織学的解析をおこなっている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件)
PLOS ONE
巻: 10 ページ: 1-17
10.1371/journal.pone.0123232
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