研究課題
基盤研究(C)
リゾホスファチジン酸(LPA)を産生する酵素オートタキシン(ATX)はリンパ節高内皮細静脈(HEV)に高発現し、HEVを介したリンパ球のリンパ節組織実質への移行を媒介するが、その詳細なメカニズムは不明であった。我々はまず、LPAがHEVの局所で産生されるかどうかをイメージングMS二より検討したところ、特定のLPA分子種がHEVの近傍で検出された。次に、ATX/LPAのリンパ球移行における役割を検討するため、ATX/LPA阻害剤を投与したところ、所属リンパ節に血行性に移動するリンパ球数が有意に減少した。次に、二光子顕微鏡解析によりATX/LPAの作用機序を検討した結果、ATX/LPA阻害剤はHEVにおいてリンパ球のローリングや接着には影響を与えず、リンパ球の基底膜を越えての血管外移動を選択的に阻害することが明らかになった。電子顕微鏡解析の結果、ATX/LPA阻害剤投与により、リンパ球は血管内皮細胞層および血管内皮細胞と基底膜の間に集積し、この現象はLPA投与により解除された。すなわち、ATXは局所的にLPAを産生することでリンパ球のHEV基底膜通過を促進すると考えられた。次に、LPAがHEV血管内皮細胞に直接、作用するかについて検討した。単離HEV血管内皮細胞にリンパ球を添加すると、リンパ球は活発に血管内皮細胞の下に潜り込み、次いで血管内皮細胞外へと移動した。この時、ATX/LPA阻害剤を添加すると、血管内皮細胞下部から細胞外へのリンパ球移動が阻害され、LPAの添加により回復した。以上より、ATXはHEV局所でLPAを産生し、LPAは血管内皮細胞に作用することで、リンパ球のHEV血管内皮細胞から基底膜への通過を促進することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
期待通りの結果が得られたため。
これまでの電子顕微鏡解析により、ATXはHEV血管内皮細胞だけでなく、血管周皮細胞(ペリサイト)にも発現することが認められた。今後、遺伝子改変マウスを用いて、どの細胞由来のATXがHEVを介したリンパ球トラフィキングに重要な役割を果たすかを検討する予定である。また、これまでの解析により、HEVを介したリンパ球トラフィキングにおけるATX/LPAの重要性は明らかになったものの、リンパ球トラフィキングを制御するLPA受容体およびその作用機序は不明である。今後、種々のLPA受容体欠損マウス等を用いて、この点について検討を進める。
該当なし。
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The Journal of Immunology
巻: 190 ページ: 2036-2048
10.4049/jimmunol.1202025