1.正常皮膚感覚受容器におけるチャネル分子等の発現解析:ラット皮膚の感覚神経終末においてチャネル分子の局在を免疫組織化学法で検討したところ、柵状神経終末においてPiezo2、TRPV2、ASIC2、ASIC3の陽性反応が認められた。柵状神経終末は、機械刺激受容に加えて温度刺激や炎症時の痛覚受容にも関与する可能性が考えられた。免疫電子顕微鏡法でPiezo2の陽性反応は、主に軸索側面の細胞膜の裏打ちに認められた。このことから毛に対する機械刺激は軸索側面の細胞膜を伸長させてPiezo2を開き、陽イオン電流を引き起こすと考えられた。一方 、ASIC2の陽性反応も軸索の細胞膜の裏打ちに認められたので、柵状神経終末の機械受容にはASIC2も関与している可能性が示唆された。 2.アトピー性皮膚炎発症マウスの皮膚感覚受容器における分子発現解析:アトピー性皮膚炎モデル動物のNCヘアレスマウスにジニトロフルオロベンゼンを塗布してアトピー性皮膚炎を誘発した。各種イオンチャネルについて免疫組織化学的検討を行ったところ、非誘発マウスの柵状神経終末は陰性であったが、アトピー性皮膚炎の柵状神経終末にはTRPV4、TRPA1、ASIC2、ASIC3の陽性反応が認められた。アトピー性皮膚炎の柵状神経終末におけるTRPA1の発現はアトピー性皮膚炎の主症状である掻痒の原因になっている可能性が考えられた。 3.遺伝的脱毛マウスの皮膚感覚受容器における分子発現解析:組織学的検討によりNCヘアレスマウスは軟毛を失わないことが判明した。PGP9.5により神経を染色した結果、非誘発マウスにおいても毛に柵状神経終末が存在することが確認できた。しかしながら、チャネル分子の発現は確認できなかったので、皮膚炎の誘発を行うまでは、機械受容器としての役割は低いと推測された。 4.研究結果の総括:本研究の成果を総括して、学会発表を行った。
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