研究課題/領域番号 |
24590255
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
菱川 善隆 宮崎大学, 医学部, 教授 (60304276)
|
研究分担者 |
日野 真一郎 宮崎大学, 医学部, 講師 (00372699)
高橋 伸育 宮崎大学, 医学部, 助教 (20404436)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ミトコンドリア / エストロゲン受容体 / 肝再生 / 遺伝子導入 |
研究概要 |
ミトコンドリアは、エネルギー産生のみならず、細胞死、がん化、老化など様々な生命現象に関与する。また自身の融合・分裂増殖により極めてダイナミックに形態が変化する。一方、エストロゲンは、エストロゲン受容体(ER)を介して直接的、間接的にミトコンドリア生理活性を変化させるが、このステロイド系によるミトコンドリアの形態・機能の制御機構は未だ不明である。この為、ステロイド代謝の中心である肝臓での肝切除・再生系を用い、エストロゲンとERが、ミトコンドリア特異的転写因子とその関連蛋白発現動態、核・ミトコンドリアDNA修飾変化、ミトコンドリア融合・分裂増殖による形態変化にどのように関与しているかを明らかにするために、平成24年度は以下の研究を行った。 1.遺伝子導入効率の検証:新たに購入した遺伝子導入装置(ネッパー21)を用いて蛍光標識されたミトコンドリアマーカーを指標として精巣と肝臓で最適な条件設定を行った。2.肝再生過程を評価する指標として、細胞増殖活性についてproliferating cell nuclear antigen (PCNA)を、M期についてヒストンH3、炎症の指標としてnuclear factor kappa B (NFkB)についての抗体の至適化を検討した。3.ERの細胞内局在証明のために、電子顕微鏡を用いて超微形態学的検討を行った。4.エストロゲンを介した転写活性の解析のために、サウスウエスタン組織化学による細胞内ER転写活性の検出法を確立した。5.ERβの作用を検証するために、遺伝子導入装置を用いてERβsiRNAを組織内に導入するための最適な条件設定の検討を行った。 以上、エストロゲン受容体を介するミトコンドリア形態変化とその機能制御に関する分子組織細胞化学手技等を確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝組織での増殖や再生に関するマーカーによる検出(PCNA, NFkB等)、ミトコンドリア関連蛋白質の局在証明、遺伝子導入装置の条件設定、並びに電子顕微鏡をもちいた超微形態解析等、ほぼすべての実験系における条件設定がそろい、正常肝組織での分子組織細胞化学的解析が行う体制が整っており、研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
再生肝組織を用いて、本年度は以下の実験を中心に行う予定である。 1.エピジェネティック解析:DNAメチル化部位を組織切片上で検出できるHELMET法を用いて、肝切除によって活性化された高ミトコンドリア転写因子群をもつ組織・細胞群でのDNA修飾動態を検討する。尚HELMET法の原理はメチル化CCGG/GGCC配列を切断できないHapIIとメチル化に関係なく切断するMspIのイソシゾマーで組織を処理しそれぞれの部位を蛍光標識を用いて免疫組織化学で視覚化するものである。またヒストンリン酸化、メチル化等を検出する市販抗体を用いてヒストン修飾状態を検討する。 2.ミトコンドリア超微形態解析:ミトコンドリアの超微形態は透過電子顕微鏡を用いて行う。また、ミトコンドリア関連蛋白群、ERα、ERβの免疫電顕によるミトコンドリア内局在検討には、パラホルムアルデヒド固定メタクリレート樹脂包埋材料によるポストエンベッディング法で金コロイドを用いて可視化する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度についてはERノックダウン並びにERβKO・ERαKOマウスによる解析を中心に行う。具体的には、ER siRNA(既に精巣で効果を確認済)を肝臓にin vivo遺伝子導入しERをノックダウンさせたマウスとERαKO及びERβKOマウスを用いて、1.肝再生におけるER発現と転写活性、2.ミトコンドリア関連蛋白の局在変化、3.エピジェネティック解析、4.ミトコンドリアの超微形態解析について検討を行う。 これらの研究により、特にエストロゲンとERを介した肝細胞でのミトコンドリア多様性制御にERαとERβのどちらが(もしくは両方が)重要かを直接的に明確にする。尚、ERKOマウスは既に市販されているが高価であり重要なポイントのみに用いる予定である。
|