申請者らは、内分泌・生殖系の発生・機能に働く核内受容体NR5A1(略称SF-1)の役割を明らかにする研究を行っている。本研究は、発生初期より生殖腺を欠如するSF-1遺伝子破壊(SF-1KO)マウスを利用して、脳の性分化を(1)性決定遺伝子Sryによる制御、及び(2)臨界期の性ホルモンに寄る制御、の2つの制御機構について、1神経核の構造、2遺伝子発現、3アポトーシス、4エピジェネティック変化、5性行動、の5つの観点に着目して解析を行ない、分子機構の解明を目指す。平成24-25年度は、脳の性分化を(1)オスの性分化決定因子として知られるSry遺伝子の有無、(2)性ホルモンの影響という2点から検討する研究を行った。発生初期より性ホルモンを欠如するマウスモデルとしてオリジナル SF-1KO マウスの脳の性分化を解析した。このマウスの生後発達段階について、性差のある脳の領域である前腹側脳室周囲核(AVPV)に着目し、神経核の大きさ、神経細胞数・密度を調べた。この領域での発現に性差を示すことがわかっているエストロゲン受容体α(ERα)、プロゲステロン受容体(PR)、キスペプチンの発現を、生後の各段階について、免疫組織化学法により調べた。ホルモンの脳の性分化への影響について、出生直後の性ホルモンは脳を雄化するか? および思春期前の性ホルモンは、脳を雌化するか? の2点を検証するために、合成エストロゲン暴露実験を行い、上述の遺伝子発現変化を免疫組織化学法により解析した。結果は、脳の性分化におけるホルモンの役割に関する仮説を支持するものであった。
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