FOXO1分子を欠損する血管内皮細胞は、in vitroでVEGFによる形態変化応答に異常をきたす。また生体の血管形成時に先端に位置するtip細胞はVEGFの濃度勾配を感知して血管の伸長を調節している。これらのことからFOXO1欠損によるtip細胞の機能異常がおこる可能性がある。このことを検証するためFOXO1を血管内皮特異的に欠損するマウスを作成し生後6日令時での網膜血管の形成を観察した結果、血管伸長の抑制、tip細胞数の増加傾向、tip細胞から伸びる突起の横方向への広がり傾向、分岐数の増加傾向が示された。さらにtip細胞でのFOXO1の細胞内局在および、その局在を調節するakt1のリン酸化レベルを免疫組織化学法にて検討したところ、FOXO1は大部分のtip細胞において核に局在しstalk細胞では細胞質に局在していた。また全活性型のAkt1が認められる少数のtipやstalk細胞ではFOXO1が細胞質に局在していることから、akt1がtipとstalk細胞でのFOXO1の局在に大きな関与をしていることが示唆された。このことからFOXO1は少なくともtip細胞において転写調節を行うことにより血管形成過程に影響していると考えられる。これまでにtip細胞に特異的に発現するとされる遺伝子についてFOXO1欠損の影響を調べたところang2、PDGF-Bなどについては有意な発現低下が認められFOXO1による転写調節の可能性が示唆されたが、直接的に転写調節をしているという証明をすることはできなかった。またFOXO1欠損網膜を用いたDNAマイクロアレイ実験を行い上記以外の遺伝子の同定を試みた。 さらに生後3日目のマウス尾の真皮リンパ管形成途中でのリンパ管内皮細胞にFOXO1の発現が確認されることからリンパ管の形成過程にも関与していることが示唆された。
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