研究課題/領域番号 |
24590259
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
齋野 朝幸 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (40305991)
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研究分担者 |
松浦 誠 岩手医科大学, 薬学部, 講師 (00405846)
佐藤 洋一 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40118253)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スピロノラクトン / 細動脈 / 細胞内カルシウムイオン / ステロイド / 共焦点レーザー顕微鏡 / 膜受容体 |
研究概要 |
利尿剤のspironolactone (SPL) は、現在補助的に高血圧治療薬の一つとして用いられている。これまで降圧効果は、利尿による循環血漿流量の減少に伴う二次的効果と考えられてきたが、詳細はよくわかっていない。我々は以前にSPLが血管平滑筋の細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)の上昇を引き起こし、細胞内外からのCa2+放出・流入の双方がこれに関与している事を報告した。SPLの受容体が膜上にも存在する可能性があり、この仮説が本当なのかどうかCa2+イメージング法を用いて研究することが目的である。SPL(300μM)によって細動脈血管平滑筋細胞の収縮反応と[Ca2+]i上昇が観察された。膜上の受容体の有無に関して検討したところ、Gタンパク受容体を構成するPLCβは[Ca2+]iの変動には関与せず、Giαは[Ca2+]i上昇を軽度増強させた。非特異的Gタンパク抑制剤のsuraminでもこの反応は部分的に抑制された。細胞内のシグナルメカニズムについて各種プロテインキナーゼの影響を検討したところ、上記Gタンパク及びGiαに関係すると考えられているPKAのみ部分的に[Ca2+]i上昇に関与することが確認された。また、細胞内受容体であるグルココルチコイド受容体及びアンドロゲン受容体を阻害すると、[Ca2+]i上昇は部分的に抑制された。以上の結果をまとめると、細胞内情報伝達系において、SPLはステロイドに見られるような細胞膜を透過し細胞内受容体に結合する以外に、細胞膜受容体のGタンパク受容体に結合して反応を引き起こす可能性が示唆された。特にPKAに関係してる可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実験の手技や方法については以前から行っているものであり、標本作製には特に問題は見当たらず、安定して標本作製を行うことができた。実験計画もきちんと立てることができ、それに従い順調に実験を行うことができた。Ca2+イメージングの手技についても特に問題はなく、データも順調に収集できた。実験の進展度も期待以上のものがあり、ほぼ自分たちが考えていたように膜上の受容体が存在する可能性が示唆され、期待通りの結果が得られ満足している。
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今後の研究の推進方策 |
実験の結果を総合的に考えると、血管平滑筋の細胞膜上に何らかのスピロノラクトンの受容体が存在している可能性が考えられる。今後スピロノラクトンにタグ(側鎖)をつけたものを合成し、細胞内に取り込まれないような合成体を作成する。その作用が元のSPLの場合とどのように異なるかをCa2+イメージング法等で検討する。修飾薬剤の合成がうまくいくかどうか、思った通りの反応が得られるかが今後の課題であろう。
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次年度の研究費の使用計画 |
今までの結果に加えさらに受容体の存在場所について検討する必要があり、実験を継続する必要がある。スピロノラクトンの修飾薬剤合成は今まで行われておらず、合成薬剤が得られるまで試行錯誤の状態であり、もかなりの時間と金額が必要となるので申請の金額については妥当であると考える。今後積極的に結果を報告していきたい。
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