研究課題/領域番号 |
24590260
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
秋元 義弘 杏林大学, 医学部, 准教授 (60184115)
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キーワード | 糖尿病 / 腎症 / 糖鎖修飾 / 糸球体 / プロテオミクス / 免疫組織化学 / 細胞培養 / 細胞骨格 |
研究概要 |
近年、ヘキソサミン代謝亢進によるタンパク質へのO-グリコシド結合型N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc) の糖修飾の異常が、糖尿病を引起す一因であることが明らかになってきている。しかしながら、糖尿病に伴いどのタンパク質に実際、この糖修飾異常が生じているのかについてはまだ詳しく解明されていない。我々は、これまでインスリン非依存性糖尿病モデルGKラットの腎臓においてO-GlcNAc化が亢進することを明らかした。さらに、腎臓まるごとを試料にしたプロテオミクスにより、O-GlcNAc化タンパク質の解析を行いアクチン、α-アクチニン4、チューブリン、ミオシンなど細胞骨格タンパク質や、ATP synthaseなどミトコンドリアタンパク質にO-GlcNAc化の有意な増加が生ずることを見出した。本年度は、細胞骨格への糖の修飾がどのような影響を及ぼすかを調べることを目的として、顕著に変化の認められたα-アクチニン4に注目し、糸球体における局在の変化を免疫組織化学的に解析した。その結果、α-アクチニン4は糸球体上皮細胞に局在し、糖尿病では発現が増加し、かつ局在が乱れることが明らかになった。また、in situ Proximity Ligation Assay法にて検討したところ、糖尿病においてO-GlcNAc化アクチニン4の増加並びにアクチンとアクチニン4との相互作用の増加が観察された。さらに、培養した糸球体上皮細胞を用いて、高グルコース存在下でのアクチニン4の局在の変化および糖修飾阻害剤の影響を検討した。高グルコース存在下で1日から3日培養した糸球体上皮細胞ではα-アクチニン4の局在の変化はほとんど観察されなかった。それに対し、O-GlcNAcase阻害剤存在下で糸球体上皮細胞を培養し、O-GlcNAc化を上昇させると、ストレスファイバーならびに細胞突起の形成が阻害され、α-アクチニン4の局在が変化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的に沿って、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、下記の2項目に関して研究を推進していく予定である。 1.O-GlcNAc化された糸球体構成分子の局在の検討:本申請者は既にin situ PLA法により、腎糸球体におけるO-GlcNAc化タンパク質の局在を検出できることを証明している(Akimoto Y, et al. Clin. Proteom. 8: 15, 2011)。 このin situ PLA法により、糸球体構成分子に対する抗体と抗O-GlcNAc抗体の二つの抗体を用いて、O-GlcNAc化されたタンパク質の局在ならびに量を免疫組織化学的に調べ、O-GlcNAc化されていないタンパク質の局在ならびに量と比較検討する。 2.O-GlcNAc化を促進あるいは抑制する薬剤による腎糸球体上皮細胞の形態変化の検討:腎糸球体上皮細胞を高濃度のグルコースあるいは加水分解酵素O-GlcNAcaseの阻害剤PUGNAc (100μg/ml) 存在下で1~8日間in vitroで培養してO-GlcNAc化を促進し、その形態変化を光顕、電顕レベルで検討する。さらに、これとは反対に、O-GlcNAc転移酵素の発現をRNAi法で抑制して、O-GlcNAc化を抑制したときの形態変化を検討し、O-GlcNAc化の役割を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた抗体作製が、業者の抗体作製キャンペーンを利用することにより、予定よりかからなかったため。 作製した抗体が免疫組織化学とWestern blottingに使用できないとき、新たに抗体作製を業者に受託して作製をしてもらう予定である。
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