研究課題/領域番号 |
24590262
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
相沢 信 日本大学, 医学部, 教授 (30202443)
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キーワード | 細胞分化・組織形成 / 造血微小環境 / ストローマ細胞 / 造血幹細胞 / 三次元骨髄培養 / 老化促進モデルマウス |
研究概要 |
造血現象は造血幹細胞という「種」が、造血微小環境という「畑」において育つ過程を示すものであり、種、畑いずれの欠陥も結果的に貧血など造血器疾患の原因となる。本研究は「畑」である造血微小環境の構成要素としての「ストローマ細胞」に注目し、造血細胞の分化、増殖にストローマ細胞がどのような関わりを持って機能しているかを、正常マウス(C57BL)およびストローマ細胞に機能障害を有する老化促進モデルマウス(senescence-accelerated mice:SAM)を用いてin vivo、in vitroの両面から研究を行った。本研究者が構築したストローマ細胞三次元培養法では、従来の二次元培養法と比較してストローマ細胞は種々のサイトカイン産生、あるいは接着因子産生などの機能面で活性化されていることが明らかとなった。興味深いことに、本培養系に造血細胞を加えた共培養を行うと、二次元に比較して三次元ではストローマ細胞のサイトカイン産生などの機能は継時的に変動することなく安定化しており、造血細胞に対する不必要な増殖、分化の誘導を行っていないことが明らかとなった。事実、三次元培養下での造血細胞はG0期の細胞が多く存在し、一定の造血細胞のみが分化し、遊出してくることが証明され、生体内造血に極めて近いモデルであることが確認された。一方SAM由来のストローマ細胞はもともとサイトカイン産生能などの機能低下があり、特にin vivoでの5-FU投与、低酸素飼育等のストレス時、あるいはin vitro環境下における造血変化に対応する能力が低下している事実が明らかとなった。さらにSAMにおける造血能の回復を目的に、正常マウス骨髄由来、あるいは三次元培養後に回収したストローマ細胞の移植実験を行い、ストローマ細胞の移植法の確立のための条件設定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した研究実施計画に沿って実験はほぼ予定通り進行しており、遅滞、変更等は現時点では特にない。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度研究実施計画に沿って以下の実験を行う。 1)三次元培養法を用いたストローマ細胞機能の評価 平成24、25年度研究で開発したストローマ細胞存在下における造血細胞三次元培養法を用いて、正常、SAMマウスのストローマ細胞機能を比較評価する。この研究では、正常、SAM由来骨髄ストローマ細胞をそれぞれ三次元培養し、その造血幹細胞増殖、分化支持機能を造血幹細胞コロニー形成法、フローサイトメトリーによる血球の識別等の方法により継時的に評価する。さらに培養中のストローマ細胞を選択的に回収し、サイトカイン産生機能などを遺伝子発現あるいはタンパク量測定により客観的に評価することにより、障害の具体的解析が可能である。 2)移植後のrecipient生体内でのストローマ細胞の動向の検討 ストローマ細胞移植実験において、移植細胞を色素であらかじめマーキングし、移植後に定着する部位、造血幹細胞との位置的関係を観察する。またストローマ細胞障害を有するSAMに移植実験を行うことにより造血支持機能の回復が得られるかを検討する。この実験により移植技術の確認、また移植したストローマ細胞が組織内で実際に機能しているかが確認でき、「正しい造血微小環境」の理解と、造血組織障害に対する移植を用いた再構築の可能性が評価できると考える。 これら実験よりストローマ細胞の造血組織における機能的役割を解析し、病態形成との関連、造血障害に対する新規治療法の開発の検討を行う。
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