研究課題/領域番号 |
24590263
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
向後 寛 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20282387)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 減数分裂 / チェックポイント / 対合不全 / リン酸化 / ノックアウトマウス / 習慣流産 |
研究概要 |
本研究では、これまでの自身の研究で明らかにしてきた哺乳類の減数分裂チェックポイントに必須の分子と考えられるHORMAD1およびHORMAD2のリン酸化修飾に着目し、そのリン酸化のタイミングや染色体上の局在、チェックポイント機構における機能的意義を明らかにすることで、哺乳類の減数分裂チェックポイントの活性化機構を調節するリン酸化シグナルの解明を目指している。 これまでにHORMAD1とHORMAD2の比較的進化的に保存されているリン酸化部位各2ヶ所ずつについて、リン酸化特異的抗体を作製し、その抗体の特異性を主に形態学的な手法によって検証した上で、マウス精母細胞や卵母細胞の減数分裂染色体における各リン酸化の局在を蛍光免疫染色法により解析した。その結果、ザイゴテン後期以降の非対合部位や、精母細胞のXY染色体軸上で各リン酸化が観察され、それぞれに特徴的な分布様式が明らかになった。さらに対合不全チェックポイントが活性化すると考えられるSPO11欠損の卵母細胞において、特にHORMAD2の1ヶ所のリン酸化が、チェックポイント活性化の指標と考えられているγH2AXというヒストンリン酸化と一致した挙動を示し、本年度の目標の一つであった「対合チェックポイントの活性化と一致した挙動を示すリン酸化部位の同定」を達成できたと考えている。 一方もう一つの目標であったHORMAD1およびHORMAD2のリン酸化部位に結合する因子の同定は現在のところ不十分な達成状況であるが、今回同定したHORMAD2のリン酸化部位に集中してそのリン酸化特異的に結合する分子の同定やリン酸化酵素(キナーゼ)の同定を試みることで、対合チェックポイントの分子機構の解明に大きく近づくことができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の目標の一つであった、対合チェックポイントの活性化と一致した挙動を示すリン酸化部位の同定については、HORMAD2のリン酸化特異的抗体を用いた解析によりそれを達成できたと考えている。一方リン酸化特異的に結合する因子の同定についてはまだ十分に行えていないが、注目すべきリン酸化部位が同定できたことにより対象を絞って研究を効率的に進めることが可能になったため、全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
対合チェックポイントの活性化と一致した挙動を示すHORMAD2のリン酸化部位が同定できたことにより、当初のようにHORMAD1およびHORMAD2の複数のリン酸化部位について平行して解析していく方針から、HORMAD2のこの部位のリン酸化を主な解析対象として集中的に解析するように方針を変更していこうと考えている。特にこの部位リン酸化をミミックする酸性アミノ酸に置換したHORMAD2を用いた酵母ツーハイブリッドスクリーニングにより、対合チェックポイントのリン酸化シグナル伝達に関与する分子や、このリン酸化に対する脱リン酸化酵素(ホスファターゼ)が同定できることを期待している。 またHORMAD1については、SPO11欠損の卵母細胞や精母細胞で対合チェックポイントとは直接的には関与しないが高度にリン酸化されていることを確認している。このリン酸化はDNA切断に依存せずに非対合部分の染色体軸上でのみ生じることから、既知の減数分裂に関与するキナーゼとは異なる新規のキナーゼによる可能性が高く非常に興味深い研究対象であるため、その同定に向けて着実に研究を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、概算で酵母ツーハイブリッドスクリーニング関連費用として20万円、遺伝子改変マウスの維持費として20万円、抗体作成費として30万円をそれぞれ予定している。またリン酸化特異的抗体や新規に同定した分子に対する抗体を用いてウェスタンブロットによる解析を多く行うことを想定しており、その作業の効率化を図るため、化学発光撮影装置(アトー AE-6981ACP)を所属研究室の他の研究者と合算で購入する(50万円程度)。物品購入以外では、EMBO meiosisミーティングに参加するための海外旅費として25万円、国内旅費10万円、論文投稿料10万円をそれぞれ予定している。
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