研究課題/領域番号 |
24590263
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
向後 寛 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20282387)
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キーワード | 減数分裂 / チェックポイント / 対合不全 / リン酸化 / ノックアウトマウス / 習慣流産 |
研究概要 |
本研究では、哺乳類の減数分裂チェックポイントに必須の分子であるHORMAD1およびHORMAD2のリン酸化修飾に着目し、そのリン酸化のタイミングや染色体上の局在、チェックポイント機構における機能的意義を明らかにすることで、減数分裂チェックポイント活性化機構におけるリン酸化シグナルの解明を目指している。 今年度は、前年度に同定した対合チェックポイント活性化の指標とされるpseudo sex bodyの形成と一致した挙動を示すHORMAD2のリン酸化についてさらに詳細な解析を進め、チェックポイントに関与する他の因子(ATRやBRCA1)と局在を比較することで興味深い観察結果が得られ、現在論文を作成中である。また一方、HORMAD1の2ヶ所のリン酸化部位に対するリン酸化特異的抗体について、当初は特異的なシグナルが検出できなかったが反応条件の最適化を行うことで、蛍光免疫染色法により各リン酸化の局在を解析することが可能となった。その結果、野生型の精母細胞では、ザイゴテン期の非対合部位やパキテン期のXY染色体軸上において、この2ヶ所のリン酸化が共通に見られたのに対し、SPO11欠損精母細胞では、これらのリン酸化が異なる局在を示すことが明らかになった。これまでの研究で観察していたSPO11欠損精母細胞におけるHORMAD1の顕著なリン酸化は、DNA損傷に依存しない未知の機構によると考えられ興味深い現象であったが、そのリン酸化部位は不明だった。今回解析したうちの1ヶ所が、このDNA損傷に依存しない主要なリン酸化部位と考えられ、このリン酸化シグナルに関与するキナーゼとその制御機構を解明する上で重要な知見となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HORMAD1およびHORMAD2の複数のリン酸化部位について、それぞれの特異的抗体による免疫染色が可能となったことで、本研究の目標の一つであるリン酸化部位の同定と各リン酸化のタイミングや染色体上の局在の理解については、ある程度達成できたと考えている。もう一つの研究目標であったHORMAD1およびHORMAD2のリン酸化部位に結合する因子の同定は、現在のところいくつかの技術的な問題もあり達成できていないが、この状況を改善するため結合因子を同定する新たなストラテジーを考案しており、それを実行していくことで対合チェックポイントの分子機構の解明に近づきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
対合チェックポイントの活性化と一致した挙動を示すHORMAD2のリン酸化や、DNA損傷に依存しないHORMAD1の主要なリン酸化部位が同定できたことにより、これらのリン酸化の機能的意議の解析へと進む準備が出来たと考えられる。当初の予定通りこれらのリン酸化部位に結合する因子の同定を進めると同時に、各リン酸化が実際に機能的に必須かどうかも解析する必要がある。最近確立されてきたCRISPR/Cas9システムによるゲノム編集の技術を用いて、これらのリン酸化部位に変異を導入した遺伝子改変マウスを作製することが現実的に可能となりつつあるので、この技術を利用してHORMDA1およびHORMAD2のリン酸化の個体レベルでの機能解析を進めたいと考えている。またキナーゼの同定に関しても、基質配列が同定できたことで候補キナーゼを絞り込むことが出来るので、その同定を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度からの繰り越しは、約11万円となっているが、前年度中に発注したものの納品が今年度にずれ込んでしまったものを除くと4万円程度であり、ほぼ予定通りに使用したと考えている。 平成26年度予算としては、結合因子同定のための質量分析関連の費用として30万円、抗体作製費用として15万円、遺伝子改変マウスの維持とCRISPR/CAS9法による作製費として50万円程度をそれぞれ概算として予定している。物品購入以外では、国内旅費10万円、論文投稿料10万円をそれぞれ予定している。
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