研究課題
細胞膜ドメインの“マクロ”クラスターは,リンパ球における免疫シナプスや,多細胞生物の発生における非対称分裂においても,重要な役割を担っていることが知られている。申請者らは,ウイルス侵入においても,この膜ドメインマクロクラスター形成が行われることを解析してきた。本研究の目的は,この“マクロ”クラスター形成機構と,そのドライビングフォースを明らかにすることにある。平成26年度には,ヒトコロナウイルス-229Eのレセプター分子でありかつラフト分子であるCD13を生細胞上で架橋し,膜ドメインの“マクロ”クラスタリング過程を解析した。その結果を以下に示す。架橋CD13のクラスタリング時に認められる直線的な配向には,長軸方向に移動するものと,長軸に対して垂直方向へ移動するものの2つパターンがあること確認されていた。このクラスタリングは,その配向性からアクチンフィラメントの関与が示唆された。そこで,アクチンフィラメントを可視化した生細胞において,アクチンフィラメント自身の動態を観察したところ,フィラメント軸の長軸方向に移動するもと,長軸に対して垂直方向に移動するものの存在が確認された(以下,アクチンフィラメントフローとする)。CD13のクラスタリングを行うと,このクラスタリングはアクチンフィラメントフローと共に移動する現象が確認できた。また重合阻害剤を用いて,アクチンフィラメントを脱重合させると,CD13のクラスターも崩壊することが確認された。このことから,CD13のクラスタリングは,アクチンフィラメントに依存して起こることが判明した。以上のことから,CD13の架橋による細胞膜ドメインのマクロクラスタリングのドライビングフォース候補としては,アクチンフィラメントフローが考えられる。現在,CD13以外のラフト分子の動態に関して,アクチンフィラメントフローとの関連性を追跡中である。
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Plos One
巻: 10 ページ: 1-19
10.1371