線維芽細胞とマクロファージは真皮を構成する上位2種の細胞である。我々は、これらの細胞が組織中でランダムに存在するのではなく、両者がお互いに相関を持って存在していることを見いだした。本研究では、これらの細胞がラットやマウスの組織中で普遍的に接触を持つこと、また病態においてこの接触が小さくなることを発見し、さらにその接触に関わる分子の同定を試みいくつかの候補を挙げるに至った。 線維芽細胞の細胞質は非常に薄く、厚さ僅か100nm未満の膜状の突起を膠原線維の間に広げている。そのため免疫組織学的手法などで全ての膜を可視化すること困難であり、細胞間の関係を知る上では電子顕微鏡レベルでの解析が不可欠である。一方、通常の電子顕微鏡では細胞の一断面を観察するにすぎず、その空間的広がりは解析できない。本研究では、この関係性をFIB/SEMを用いた次世代ストラクトーム解析によって3次元的に可視化し解析した。その結果、正常組織では線維芽細胞同士はお互いに連結し、マクロファージは線維芽細胞の細胞体周辺で表面の数10%を覆われる形で存在することが多いことが明らかとなった。一方、病態や創傷治癒組織では、その接触は小さいか、接触を持たないことが確認され、細胞接触が真皮の正常構造維持に何らかの役割を持つことが示唆された。 線維芽細胞とマクロファージの共培養系を行うと両者は頻繁に接触し、何からの関係性の存在が予想された。そこでDNA Arrayによる解析を行い、いくつかの接着分子の発現を見いだした。その分子の存在は免疫組織学的にも証明された。 今後、これらの分子が病態においてどの様な挙動を示すのかを明らかにすることで、細胞性接触が組織の治癒過程にどの様な役割を果たすのか、延いては、皮膚疾患に対し新しい概念の治療法を開発する起点となることが期待される。そこで、臨床的側面を高めてさらに検討を進める予定である。
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