我々の研究室独自の技術として確立している、単離した核周辺小胞体 (nuclear envelope) 標本における電気生理学的記録から、Ca2+依存性の電位依存性K+チャネル (KCa1.1) の小胞体膜に対する配向が、現在一般に受け入れられている小胞輸送機構から予測されるものとは逆であることが示唆された(図1参照)。これは、現在知られる小胞輸送機構では説明できず、未知の小胞輸送機構の存在が疑われる非常に興味深い現象である。本申請ではこの現象に着目し、小胞体膜中では通常と異なる配向を持ちながら、形質膜では通常の配向を示す、KCa1.1チャネルの小胞体膜への埋め込み、形質膜への輸送のメカニズムを検討するとともに、その機構に必要とされる、細胞内因子の探索と機能解析を行う。本年度も引き続き、KCa1.1チャネルの小胞体膜における配向を、電気生理学的手法以外の方法で確認する目的で実験を行った。 今年度は、電子顕微鏡を用いた解析を行い、KCa1.1チャネルの配向の確認を試みた。また、nuclear envelope標本に対するパッチクランプ法の適用により、薬理学的にもHEK293saibounoER膜におけるKCa1.1チャネルの配向が従来と逆向きであるとこが示唆された。
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