研究課題/領域番号 |
24590268
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
佐藤 紳一 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (10375305)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 心電図 / センサー / ピエゾ / 非拘束自由行動下 / マウス / 平板電極 / 国際情報交換(アメリカ) |
研究概要 |
平成24年度の研究計画に従い、非拘束自由行動下でのマウス心拍数連続記録を可能にする平板型心電図複合センサーおよび多入力心電図信号記録システムの開発を行った。始めに透明なプラスチック板の上で自由に行動するマウスの四肢の接地パターンを観察した結果、接地面積は前肢1cm2、後肢1.5cm2程度であった。また四肢の接地間隔は後肢左右間隔が1.5cm以上であったが、前肢左右間隔および前後肢間隔は1cm以内になることも多く最適電極パターンの決定は困難であり今後も検討を継続する。平板型心電図複合センサーの第1次試作は、15個の電極を配置しそれらの電極を全て抵抗を介して接地し記録する方法を開発した。15個の電極信号を16チャネル入力のADコンバーターに接続し、いずれか2つの電極にマウス四肢の前肢あるいは後肢が接触した時にその2電極に対応する信号(2/16チャネル)に心電図に対応する波形が現れることを確認した。残る1チャネルのADコンバーター入力にはセンサー裏面に接着したピエゾセンサー接続線を接続し、マウスの活動に応じた振動信号を記録した。また、平板型心電図電極は金メッキを施した結果、マウス糞尿に暴露されても腐食しないことを確認した。スタンフォード大学・西野教授とのディスカッションにおいて、睡眠中のマウス四肢は限局した面積に集中するため、本センサーの電極パターンでは四肢が同一電極上に位置し心電図記録ができないことが予想された。しかし、睡眠時のマウス心拍信号はピエゾセンサーで検出可能であり、したがって心電図およびピエゾセンサーの両特性を具備する本課題のセンサーは活動時、睡眠時の状態に依存しない、生直後のマウスなど小動物にも利用可能な非侵襲的心拍測定装置を世界で初めて実現するものであり、小動物の生直後から老齢期にわたる循環調節機構に関する研究を推進し基礎・臨床医学の発展に寄与するものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画は非拘束自由行動下でマウス心拍数連続記録を可能にする平板型心電図複合センサーおよび多入力心電図信号記録システムの開発である。平板型心電図複合センサーは30個の電極(1.5×2.3cm2)を約19×10cm2のガラスエポキシ板上に配置したが、離れた位置にある電極を全て2個づつ接続したため電気的には15個の電極の構成とした。また、この平板型心電図複合センサー裏面にはピエゾセンサーを接着し、心電図信号の検出およびマウス活動量を振動として検出することができる構造とした。心電図電極には金メッキを施し、マウス糞尿による酸化・腐食を防ぎ繰り返し使用可能なセンサーの一時試作が完了した。センサーが検出する信号(心電図およびピエゾ信号)をADコンバーターに入力するために作成した16チャネル増幅器および記録用コンピューターもマウスを用いて動作を確認しており、多入力心電図信号記録システムの第一段階が完成した。コンピューター画面に現れる15チャネルの信号波形は、本システムの構造上、差動増幅器出力とは異なり通常の心電図波形ではない心電図由来の波形が2つのチャネルに現れる。しかし、本研究課題の目的が心拍数に基づいたマウスのダイナミックな循環調節機構の解明であり、正確な心電図波形の取得が必須ではないことから、本研究課題の遂行に影響を与えるものではない。実際1分間程度の初期実験において、活動時マウスの心電図由来信号波形が50%以上の時間検出されており、ほとんど不可能であったピエゾセンサーによる心音波形検出に比べて格段に心拍数検出率の向上が期待できるレベルにある。以上のように、今後の改良は必要であるが、平成24年度の研究計画である平板型心電図複合センサーおよび多入力心電図信号記録システムの開発は第一段階としておおむね達成したものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究計画においては、実際に非拘束自由行動化のマウス体動および心電図の記録実験を行い、その実験結果を反映しながら平板型心電図複合センサーおよび多入力心電図信号記録システムの完成度を高める。当面は16チャネルADコンバーターを用いて心電図電極15個全ての記録を行い、心電図電極パターンの改良を進めて信号検出率(時間割合)の向上を模索し平板型心電図複合センサーの2次試作を行う。複合センサー板はピエゾセンサーによる生体信号検出のためにはできる限り薄く硬い材質が望まれるが、心電図電極との共存を考慮した材質の選定を検討する。同時に15チャネルの信号の中に現れる心電図由来信号を有する2つのチャネルの自動検出アルゴリズムを検討し、1チャネルでの心電図由来信号の記録が可能なシステムの構築を目指す。これが可能であれば、センサー板の面積をブロック毎に細分しより多くの心電図電極を配置し心電図信号検出の空間分解能を向上することが期待できる。現時点でマウス四肢が電極に接触した時に検出される直流成分電圧の大きなステップ状変化が現れること、およびマウス四肢が接触していない電極においてノイズが大きく記録されるなどの問題が確認されており、信号処理アルゴリズムの方策について新たに検討を加えていく。マウス心拍数記録実験では行動の変化に伴うダイナミックな心拍数変化の記録および覚醒―睡眠間の状態変化に伴うダイナミックな心拍数変化についてデータを集積していく。計画の遂行にあたって適宜スタンフォード大学医学部精神神経・行動科学講座・西野教授を訪問しディスカッションの上、行動解析のポイントについてアドバイスを得つつ上述の開発を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額約32万円が生じた主な理由は、平板型心電図複合センサーの試作を複数回行う予定が1回に留まったことによる。これは次年度に試作を継続して行うこと等により使用する予定である。 次年度の研究費使用計画は以下の通りである。 平板型心電図複合センサーは1次試作を用いてその総合的性能を検証し2次試作に向けた電極パターンの変更および基板の材質の検討などを行っていく(250000円)。心電図電極とADコンバーターの間のインターフェースとして作成した16チャネル増幅器をより、信号の安定出力に貢献する多チャネル信号処理回路にグレードアップするためにオシロスコープ(40000円)および信号処理回路用電子部品等(100000円)を購入する。装置動作の検証のため実験動物を購入し実験を行う(20000円)。計画の遂行にあたっては、スタンフォード大学・西野教授を訪問し、現状の問題点について、また新たな実験上のアイデアあるいは装置の性能向上についてディスカッションを行う(500000円)。その他国内学会旅費(100000円)、その他謝金等(150000円)合計1160000円を次年度の研究費として使用する計画である。
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