研究課題
非拘束自由行動下マウス心電図連続記録用の平板型心電図複合センサーシステムについて、膨大な15ch心電図情報量を圧縮するため開発した心電図信号加算回路を含む心電図ピエゾ複合センサーの特許出願(特願2015-058838)を行った。この加算回路は複数の電極に分割された心電図を一つにまとめノイズを低減するもので、どのチャネルを選択し、どのチャネルの信号を反転するかのアルゴリズムの最適化が必要であるが一定程度の効果が確認され本年度後半に使用した。本複合センサーはストレスを与えた時、および睡眠時に高い心電図検出率を持ち、本研究の目的であるマウスのダイナミックな循環調節の解明に関して限定的であるが活動時および睡眠時における循環調節態様を示す心拍数変動データの取得に貢献した。特筆すべき点として、本研究において以下のような予想外の興味深い発見があった。①従来の電気刺激などによる身体的ストレス反応実験と異なり、マウスケージの棒による打撃への反応から、音や振動に対しても神経性循環調節を伴う精神的ストレス反応を示すことが分かった。②ストレス付与の方法を模索している過程で、我々は偶然にマウスケージのある実験室に入室しマウスを覗き込むだけでも心拍数が上昇することを見出した。③さらに、②の反応は睡眠中かつ心拍数低下時(<400b/m)に行うとダイナミックな心拍数変化が得られ多くの場合心房細動を引き起こすことを発見した。これが事実であれば、ヒトの凝視による精神的ストレスがマウス心房細動を誘発する世界初の発見であり、生理学的、病態生理学的に意義がある。この現象は視覚による皮質でのストレス認知が辺縁系での情動喚起を引き起こし視床下部を介した自律神経制御に関与する結果であることが考えられ、心房細動モデルマウスとして未解明の心房細動発生メカニズムの研究にも貢献が予想される。(論文投稿準備中)
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