研究課題/領域番号 |
24590272
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
河合 佳子 信州大学, 医学部, 准教授 (10362112)
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研究分担者 |
大橋 俊夫 信州大学, 医学部, 教授 (80020832)
安嶋 久美子 信州大学, 医学部, 助教 (70584051)
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キーワード | 呼吸生理学 / 流れ刺激 / F1/FO ATP synthase / 炭酸ガス |
研究概要 |
従来、肺での炭酸ガス化の概念は、赤血球が酸素化される際に二酸化炭素を排出するとされていた。しかし私共は、肺細動脈に加わる流れ刺激によってF1/FO ATP synthaseから排出された水素イオンと血漿中の重炭酸イオンと反応して炭酸ガスを発生させるという、呼吸生理学の新概念を発見し、すでにJournal of Cellular Physiologyに報告した。 その結果を元に、生体内でもこの新しい炭酸ガス化機構が証明できるよう、当該年度は3.0kg前後の白色白兎を用い、全身麻酔下で気管内挿管を行い、呼吸状態(一回換気量・換気回数等)や循環動態(交感神経作動薬による血行動態の変化や肺動脈の人工的な狭窄による血流速度の上昇)などを変化させ、排出される炭酸ガス濃度を測定した。また、気管にゼラチン様物質を充填することにより肺の換気効率を変化させたうえで呼気の炭酸ガス分圧を測定し、換気・血流比の変化による炭酸ガス産生の変化について検討した。この結果から、生体内でも肺細動脈に対する流れ刺激により炭酸ガス産生が行われていることを確認した。このような研究を行うことにより、肺内の血管への流れ刺激が炭酸ガス化にどのような影響を及ぼしているかを多角的に捉えることができ、現在確立した治療法がほとんどない原発性肺高血圧などの病態解析や新薬開発に役立つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に解析した流れ刺激が培養肺細動脈内皮細胞に及ぼす影響の結果を基に、当該年度は全身麻酔下のウサギを用いた炭酸ガス排出と循環動態の関連性を解析する様々な条件設定を行うことができた。このことから、現在までの研究の達成度としてはおおむね順調と考えている。 さらに本研究を進めるためには、すでに臨床で使用されている薬剤を用いたり、今までの研究成果を基に新たな作用機序で有効性を現わす可能性のある薬剤を検討することが必要であり、次年度の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
生体内での炭酸ガス産生機構をさらに解明していく予定である。具体的には、3.0kg前後の白色白兎に全身麻酔下で気管内挿管を行い、呼吸状態の変化と炭酸ガス産生の関連性、アドレナリン等、交感神経作動薬による血行動態の変化や肺動脈の人工的な狭窄による血流速度の上昇などに代表される循環動態の変化と炭酸ガス産生の関連性につき詳細に検討する。さらに、25年度までに得られた結果を基に、換気・血流比を変化させた状態での炭酸ガス産生量の変化について、物理的あるいは薬理学的手法を用いて検討を進める予定である。また、すでに臨床的に呼吸器疾患や循環器疾患に用いられている薬剤により、炭酸ガスの産生がどのように変化するかの検討を進め、新たな作用機序を持つ新薬の開発や治療効果の判定など、臨床応用に役立つ基礎研究を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画で見込んだよりも安価に試薬を購入することができたため、未使用額2,571円が生じた。 本研究課題の遂行のために用いる大型機器はすでに当教室に保有しているため、試薬等の消耗品購入や学会参加のための旅費に充当させていただく予定である。消耗品の詳細としては、実験動物の購入、循環動態を変化させるような薬剤、細胞培養に必要な培地や炭酸ガス、分子生物学的研究に必要な免疫組織学的研究用の試薬や抗体などである。 また、25年度の残高は追加試薬を購入できるような額ではなかったため、26年度の試薬購入に充てることとした。
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