研究課題/領域番号 |
24590273
|
研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
浦野 哲盟 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50193967)
|
研究分担者 |
鈴木 優子 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (20345812)
佐野 秀人 浜松医科大学, 医学部, 助教 (80623842)
|
キーワード | 血栓 / 凝固 / 血小板 / 線溶 |
研究概要 |
本研究は、血栓形成過程において、組織因子 (TF) が活性化血小板膜上の phosphatidylserine (PS) 上で活性顕在化しフィブリン 形成に寄与する機構を解析するものである。昨年度の研究で、 フィブリノーゲン存在下で血小板をトロンビン刺激するとすべての血小板がフィブリン網に結合した後 PS を発現すること、これにはGPIIb/IIIa を介したフィブリン網への結合と、血小板形態変化により生じる張力による機械刺激が必須である事実を明らかにし、PLoSONE に報告した。これは活性化血小板による凝固系活性化の増幅系として重要と考える。上記は、共焦点顕微鏡を用いて、血小板存在下でのフィブリン形成ならびに血小板活性化過程を経時的に検討した結果得られた成果である。その後の同様の方法を用いた研究において、活性化血小板膜の周辺からフィブリン網の溶解も開始される現象を、初めて可視化して証明する事ができた。凝固と線溶系が密に関連し、凝固亢進部位で早期に線溶系が活性化される事は過剰に形成された血栓を早期に溶解し血管の開存性を維持する上で重要な機構である。これまで、線溶系の主要因子であるプラスミノゲンの構造変化や、線溶系インヒビターである plasminogen activator inhibitor type 1 (PAI-1) 活性の活性化凝固因子による不活性化等の機構を報告してきた。これを実証する結果であり、現在論文にまとめている。 また in vivo の系でも、PS 発現部位に一致してプラスミノゲンが早期から集積する事実を見いだし、今回の in vitro の結果の生理的重要性を支持する結果と評価している。現在論文投稿中である (Murakami Tanaka A et al)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年 in-vitro で、constant に PS を露出する系を確立し、PS発現血小板に sTF が結合することも確認した。これはそれまでの in-vivo の結果と一致する。 本機構は凝固系活性化の増幅機構を理解する上で無論重要であるが、今回同部位で早期から線溶系も活性化されている事実は、凝固・線溶のクロストーク機構を解明する上でも大変重要な発見である。今後の機構の詳細な解析に大きく貢献すると評価する。 しかしながら昨年同様に凝固系開始機構に直結していない点が今後の課題として残っている点は、達成度の評価ではマイナス点となる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、TF と FVIIa が共局在しフィブリン形成の起点となる 機構を証明するとともに、TF/FVIIa複合体形成並びに活性顕在化に及ぼす PS の役割を明らかする事を目指す。これにより、生理的に必要な止血血栓形成と血栓症の原因となる過剰血栓形成の相違を明らかにし、後者を選択的に抑える方策の確立に寄与したい。同時に本年度明らかにした PS 発現部位での線溶活性の早期発現の詳細な機構も明らかにし、やはり不要血栓の早期溶解を促進する方策の確立に寄与したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画を一部変更したため、25年度に予定していた FRET 法を用いた FVIIa/tissue factor 複合体と、tissue factor pathway inhibitor (TFPI) との結合の可視化の実験を行わず、これに伴う蛍光試薬等の消耗品の使用が少なかった。これらの実験、およびこれに替わる phosphatidyl serine (PS) 発現部位での凝固に伴う線溶活性発現の可視化の実験に、繰越金と26年度配分の助成金は使用予定である。 消耗品費 蛍光試薬等:70万円、可溶性Tissue factor 等凝固線溶系タンパク質:100万円、マウス:50万円、 旅費:25万円、その他(雑誌掲載費等):224,276円
|