研究実績の概要 |
本研究は、血栓形成過程において活性化血小板膜上でどのように組織因子 (TF) が凝固活性化VII因子(FVIIa) と高分子複合体を形成し、フィブリン形成に寄与する機構を解析するものである。これまでの研究で、活性化血小板膜上に発現するphosphatidylserine (PS) が主要な役割を有すること、またその発現には血小板の GPIIb/IIIa を介したフィブリン網への結合と、血小板形態変化により生じる張力による機械刺激が必須である事実を明らかにした。これは活性化血小板による凝固系活性化の増幅系として重要と考える。上記は、共焦点顕微鏡を用いて、血小板存在下でのフィブリン形成ならびに血小板活性化過程を経時的に検討した結果得られた成果である。その後の同様の方法を用いた研究において、活性化血小板膜の周辺からフィブリン網の溶解も開始される現象を、初めて可視化して証明した。凝固と線溶系が密に関連し、凝固亢進部位で早期に線溶系が活性化される事は過剰に形成された血栓を早期溶解と血管の開存性維持という観点で重要な機構である。これまで、線溶系の主要因子であるプラスミノゲンの構造変化や、線溶系インヒビターである plasminogen activator inhibitor type 1 (PAI-1) 活性の活性化凝固因子による不活性化等の機構を報告してきた。これを実証する結果である。また今回、thrombin activatable fibrinolysis inhibitor (TAFI) というトロンビンにより活性化される carboxylpeptidaseが生理的にこれらの機構を制御している事実も確認し、現在論文にまとめている。また in vivo の系でも、PS 発現部位に一致してプラスミノゲンが早期から集積する事実を見いだし (Brzoska T et al, PLoSONE, 2015)、今回の in vitro の結果の生理的重要性を支持する結果と評価している。
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