研究課題
これまで、TRPM2の活性化機構や細胞死に関わる報告は、活性酸素種による研究が主に行われていたが、高浸透圧刺激など生理的な環境における活性化機構に関わる報告は全くなかった。本課題は、前年度に引き続き相互作用タンパク質によって活性制御を受けるという新たな活性化機構を提唱する。本課題では、細胞に高浸透圧刺激を与えた際に活性化するTRPM2の活性化シグナルおよびその分子機構の解明と細胞死への関与の解析を行った。これらの課題を遂行することで、TRPM2の新規活性化機構と細胞死の原因解明を目指した。本年度は、以下の課題を設けて研究を遂行した。1.上皮細胞に発現するTRPM2の活性化機構の解明高浸透圧刺激を行った後のシグナルには、MAP Kinase、tyrosine Kinase、PKC、PKA、酸化ストレスなど複数のシグナルが活性化することが知られている一方、主な活性化経路は、NAD+、ADPr、cADPr、酸化ストレスやCa2+がその活性に重要だということが報告されている。そこで、これらの活性化機構におけるメカニズムの相違を確認した。その結果、高浸透圧刺激の活性化には活性酸素種、Ca2+およびADPr産生が重要であることが判明した。2.TRPM2およびEFHC1を共発現させた際の機能変化の解析EFHC1は若年性てんかんの原因遺伝子であり、電位依存性R型Ca2+チャネルのC末端に結合することで電流増強を惹起するが、てんかん家系に見られるEFHC1、5種類の点変異体変異では、R型カルシウムチャネルに対する電流増強効果が消失するということを報告した。そこで、今回、EFHC1変異体と遺伝子多型の3種の変異体を含め8種の変異体のTRPM2の機能に対する機能評価をCa2+測光および電気生理学測定によって評価した。
1: 当初の計画以上に進展している
上皮細胞に発現するTRPM2の活性化機構の解明として、課題を遂行してきた結果として、2012年J. Physiol. (London)に「The ΔC splice-variant of TRPM2 is the hypertonicity-induced cation channel in HeLa cells, and the ecto-enzyme CD38 mediates its activation」の報告をした。その一方で、てんかんに関わるTRPM2活性のEFHC1による調節機構の解明として、2012年Cell Calciumに「The juvenile myoclonic epilepsy-related protein EFHC1 interacts with the redox-sensitive TRPM2 channel linked to cell death」の報告をした。これらの結果より、本年度の研究の計画はおおむね順調に進展しており、研究の目的は達成できた。
TRPM2は、酸化ストレスによって活性化するイオンチャネルとして良く知られている。そこで、活性酸素種や高浸透圧溶液が多く発生する体内の場所や現象に着目し、今回の課題の結果を踏まえたうえで、in vivoにおけるTRPM2の役割の解明として、TRPM2欠損マウスを用いて新たに研究を展開していきたい。
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