研究課題
基盤研究(C)
Elongin Aホモ欠失マウス胚のホールマウントin situハイブリダイゼーション解析を行い、placodeマーカーのPax8、自律神経系の形成に必要なMash1の発現に差は認められないが、neural crestマーカーのSox10や感覚神経系の形成に必要なNgn1等の発現が顕著に減少していることが判明した。ES細胞を用いて胚様体を形成させ、免疫組織学的解析を行ったところ、レチノイン酸による分化誘導により、野性型細胞由来の胚様体では神経前駆細胞マーカーNestinや成熟神経細胞マーカーβIII-tubulinの発現が誘導され神経細胞へ分化が認められたのに対し、ホモ欠失細胞由来の胚様体では分化が見られなかった。また両胚様体共にアストロサイトマーカーのGFAP、オリゴデンドロサイトのマーカーCNPaseの発現は認められなかった。また、胚様体を用いたマイクロアレイ解析でElongin A欠失細胞で発現の低下が認められた、Neurogenin1、Neurogenin2、Hoxa7遺伝子についてChIP解析を行ったところ、野性型細胞ではレチノイン酸による分化誘導によりプロモーターならびにコーディング領域にPol IIの増加が検出されたのに対し、ホモ欠失細胞では増加が見られなかった。さらに、E3活性のみ、伸長活性のみを持つ変異体を用いたレスキュー実験を行い、Elongin Aの伸長機能が神経分化に重要であることが判明した。以上のことから、Elongin Aが伸長機能を介して神経堤細胞の分化を指令するNgn1等の転写制御因子の発現を促進することにより、感覚神経系の形成に関与していることが示唆された。(Cell Reports, 2012)
2: おおむね順調に進展している
Elongin Aが1)神経系の形成、なかでも感覚神経系の形成において重要な役割を果たしている、2)それにはElongin Aの伸長・E3の2つの機能のうち伸長機能が重要である、こと等を明らかにし、間接的ではあるがElongin Aの標的遺伝子と思われる幾つかの遺伝子を同定できた。そして得られた成果をCell Reportsに発表した。よって研究は概ね順調に進展していると思われる。
ChIP解析により標的遺伝子と思われるものを幾つか同定したが、抗Pol II 抗体によるもので直接的なデータはまだ得られていない。そこで抗Elongin A抗体を幾つか作製したので、それらを用いたChIP解析により確認を行う。さらに、Elongin Aの標的遺伝子の網羅的探索を行うために、ES細胞ならびにマウス胚を用いてRNA-seqやChIP-seqによる解析を行う予定である。尚、共同研究先であるStowers研究所のConaway博士らとも連絡を密に取りながら研究を進めていく予定である。
発生した繰越金、次年度の研究費は、遺伝子工学・生化学実験用試薬、細胞培養用試薬、プラスティック器具、RNA-seqならびにChIP-seqによる解析費、学会発表のための旅費に使用する。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (3件)
Cell Reports
巻: 2 ページ: 1129-1136
10.1016/j.celrep.2012.09.031
http://www.kochi-ms.ac.jp/news/24keisai-aso.html
http://www.kochi-ms.ac.jp/html/gakubu/fg_chmst.html
http://www.kochi-ms.ac.jp/~fg_chmst/index.htm