研究課題/領域番号 |
24590281
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
植田 高史 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90244540)
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研究分担者 |
鵜川 眞也 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20326135)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 刺激分泌関連 / イオンチャネル型オーファン受容体 / 酸感受性イオンチャネル / ASIC family / TRPV family |
研究概要 |
ASIC1a, ASIC1bおよびASIC4について、RT-PCRによる遺伝子発現解析とcRNAプローブによるin situハイブリダイゼーション(ISH)法を行い、ASIC1b mRNAが下垂体中葉、ASIC4 mRNAが下垂体前葉と中葉に発現していることを見いだした。さらに市販特異抗体を用いた免疫染色によりそのタンパクレベルでの発現も確認した。また脳組織を用いたISH法によればASIC4 mRNAは視床下部の室傍核(PVN)や視索上核(SON)のバゾプレッシンニューロンにも発現しており、下垂体後葉でのホルモン分泌調節への関与も示唆された。ASIC4を下垂体組織からクローニングしてその配列が以前報告された全長タイプでありバリアントではないことを確認した。HEK293T細胞を用いた強制発現系によりASIC4のリガンドを探索したが、現在までのところ同定には至っていない。ASIC4の遺伝子改変動物作製については、ノックアウト(KO)マウスを作製することに決め、プロモーターを含めた遺伝子のクローニングとベクターへの移し替えが完了した。下垂体中葉に発現しているASIC1bの研究では、中葉ホルモンであるα-MSH分泌への関与について、ストレス負荷によるα-MSH分泌量を、野生型とASIC1b-KOマウスを使いELISAにより解析しているが、ストレスなどの条件設定が難しくコンスタントな結果は得られていない。また酸感受性サブタイプを含むtransient receptor potential vanilloid (TRPV)ファミリーについては、TRPV2タンパクの発現が下垂体後葉に認められ、カルシウムイメージング解析により全下垂体の約12%の細胞にTRPV2の活性薬であるprobenecidに対する応答が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ASICチャネルに加えTRPVチャネルの下垂体におけるmRNAとタンパクレベルの発現については予定通り大まかな解析が完了した。市販のASIC4の抗体の性能が良くなく下垂体前葉における細胞種の同定については困難であったため独自で抗体の作製を始めている。ASIC4のノックアウト(KO)マウスについても予定通りベクターの構築が完了し、さらに市販のASIC4相同組換済ES細胞を入手する手続きを終えた。ASIC4の機能解析の実験は思うように進まず未だリガンドは不明のままであるが、これは予想されたことであり、以下に示すリガンド同定とは別角度からの実験は予定通り進行している。ASIC4はASIC1bとヘテロマーを形成し、ASIC1bの機能を修飾している可能性がイメージング解析によりもたらされ、現在電気生理にて解析中である。さらに我々はASIC4が別のファミリーであるTRPV2ともヘテロマーを形成している可能性を見いだした。これらは脳視床下部で重要な内分泌機能を営む室傍核や視索上核のニューロンにおいて共存しており、これらの発見は内分泌調節機構を探る上で興味深い。
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今後の研究の推進方策 |
ASIC4の新しい抗体を得て下垂体前葉細胞における分布や発現している細胞種を同定する。細胞種が同定できたらそのセルラインを用い、主にホルモン分泌におけるASIC4の役割を探っていく。またASIC4については強制発現系でのリガンド探索を引き続き行う。またASIC4とASIC1bまたはTRPV2の共機能発現を共免疫沈降法や機能解析により明らかにする。TRPV2はPVNやSONのニューロンでASIC4と共発現しているばかりか、下垂体後葉細胞にも発現しており、この生理学的意義についても引き続き探索を行う。TRPV2は浸透圧感受性があることが報告されており、バゾプレッシンニューロンの機能調節に何らかの関与が示唆される。バゾプレッシン、あるいはATPやタウリンなど、その分泌を調節する因子についてTRPV2活性化の影響を探る。下垂体中葉に発現するASIC1bについては、α-MSHのアッセイ系を確立させ、ASIC1b-KOと野生型マウスとの応答の違いにより、ASIC1bの下垂体中葉における役割を明らかにしたい。ASIC4-KOマウスについては、外注し個体を得た後、バッククロスを進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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