研究課題
国内で4000万人以上にも上ると推定される高血圧患者の約4割が食塩感受性高血圧で、脳心血管障害と慢性腎臓病の発症・進展に深く関与すると考えられている.食塩感受性高血圧症は主に腎臓のNa+排泄機能異常と密接に関係しており、塩分過多により血中アルドステロン濃度は減少するが、遠位尿細管・皮質集合管でNa+再吸収を担う上皮型Na+チャネル(ENaC)の遺伝子発現・膜発現を制御するシステムが異常にコントロールされていることが一因であると考えられる.我々は、これまでにDahl-salt sensitive rat (DS-rat:高食塩食摂取で高血圧を発症するモデル動物)を用いて、高食塩食を摂取したときにアルドステロンに対する応答が破綻しており、本来抑制されるべきときに腎臓での上皮型Na+チャネル(ENaC)を介したNa+再吸収が亢進して、容量性高血圧を発症することを見出すとともに、ケルセチンがENaC遺伝子発現を抑制して食塩感受性高血圧発症ラットで血圧上昇を有意に抑制することを見出している.このように、ケルセチンによる長期的な影響について明らかにした一方で、我々はケルセチンがアルドステロンにより亢進したENaCを介するNa+再吸収を短時間(1時間程度)で著しく抑制することも見出した.そこで、本研究では、ケルセチンの短期的な作用メカニズムを解明する目的で研究を推進したところ、ケルセチンはENaCの活性化に関与するプロテアーゼ活性を抑制的に制御するとともに、Na+/K+ ATPaseの活性を直接阻害することによりナトリウム再吸収の抑制に寄与する可能性を示唆する結果を得ており、ケルセチンによる新たな抑制メカニズムを見出した。
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J Physiol Sci
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http://kpum-molecular-cell-physiology.info/research/index.html