C57BL/6Jマウスによる小腸虚血再灌流モデルを使用し、実験を施行した。麻酔下で開腹したのち上腸間膜動脈に対しクリッピングによる10分間1回の先行虚血(虚血プレコンディショニング)を施行する群としない群をそれぞれ45分間血流の遮断を行い、4時間の再灌流後に、安楽死させ、小腸を摘出しその組織障害の程度を判定した。虚血プレコンディショニング (IPC)は優位に腸管局所での炎症は軽減していることが確認された。次にプレコンディショニングのモデルに対比するため虚血ポストコンディショニング (IPoC)を検討した。同様に上腸間膜動脈に対し45分間血流の遮断を行ったあと、30秒間の短時間の虚血を3サイクル施行でのIPoCを施行し、4時間再灌流後に小腸を摘出、局所の障害程度を判定したところ、IPCを施行した群において、施行しなかった群に比べIPC群と同様に優位に腸管局所での炎症は軽減していることが確認された。このことにより、IPCおよびIPoCのいずれにおいても小腸局所の虚血再灌流障害に対し効果があることが確認された。しかし、組織の障害程度がIPCの方が弱いことより、その効果の発現の強弱には差があり、IPoCに比し、IPCはより強い効果発現であると考えられた。一方、再灌流時間を1時間に減少させた場合、組織障害の程度は4時間の再灌流に比べ障害の程度は弱く、障害は継時的に増強することが確認された。 その効果発現機序についてはNOドナーやCGRPを虚血再灌流の前投与した場合において、IPCと同様の効果発現を認め、それらの関与が確認された。一方でIPoCにおいては、長時間の虚血終了時にNOドナーやCGRPを投与してもその効果発現は弱く、その関与はIPCに比べ弱いと考えられた。今後は、またIPCに関与が報告されているものに関し、IPoCでの検討を進める予定である。
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