研究課題/領域番号 |
24590289
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
梶 博史 近畿大学, 医学部, 教授 (90346255)
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研究分担者 |
岡田 清孝 近畿大学, 医学部, 講師 (20185432)
河尾 直之 近畿大学, 医学部, 助教 (70388510)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 骨再生 / 骨芽細胞 / 骨修復 / 線溶系 / 骨形成 |
研究概要 |
骨・軟骨再生は外傷や腫瘍切除により高度に欠損した骨の修復に期待される治療法であるが、その効果的な方法については未だ充分わかっていない。一方、組織線溶系は細胞外基質の分解や組織修復に寄与するが、骨修復過程における組織線溶系の役割は不明である。私共は線溶系の最も重要な因子であるプラスミノゲンの欠損マウスを用いて骨修復におけるプラスミノゲンの役割を検討した。 骨修復は大腿骨に骨欠損を作製し、マイクロCTにより骨修復の程度を検討した。異所性骨化はBMP-2(骨形成蛋白)含有コラーゲンスポンジを大腿部筋肉内に植え込むことにより検討した。 骨欠損からの骨修復において、軟骨および骨形成はPlg欠損マウスにおいて減少し、骨修復が著明に遅延した。さらに、骨修復部位のマクロファージ集積、TGF-β(Tansforming growth factor)発現、VEGF(血管内皮増殖因子)発現および血管新生がPlg欠損マウスにおいて減少した。骨欠損を与えた大腿骨の骨髄由来マクロファージにおけるTGF-β発現はプラスミノゲン欠損マウスにおいて減少した。一方、異所性骨化はプラスミノゲン欠損マウスにおいて変化がなかった。また、初代骨芽細胞培養の検討で、プラスミノゲンは骨芽細胞、骨髄間質細胞の骨分化能に影響を及ぼさなかった。 これらの実験結果より、プラスミノゲンはマクロファージからのTGF-β発現とそれに続くVEGFを介した血管新生を促進することで骨修復に寄与することが示唆された。また、プラスミノゲンは骨髄細胞の存在下での骨化過程に重要な役割を果たす可能性が考えられ、骨髄幹細胞を用いた再生医療において組織線溶系の調節が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、組織修復に重要な役割をはたす線溶系関連因子の骨・軟骨再生における役割を明らかにすることが目標である。現在の研究の進展状況では、線溶系関連因子のうちでは最も最終段階のプラスミンの前駆体であるプラスミノーゲンの欠損マウスを用いて、プラスミノーゲン欠損マウスでは、骨修復が著明に遅延するという重要な結果が得られた。しかも、プラスミノーゲン欠損が骨修復を遅延させる機序として、骨再生のみならず軟骨再生も低下し、さらにその機序に血管形成が関わることが明らかにされた。これらのデータは、プラスミノーゲンが骨・軟骨再生に関わる重要な新しい知見を明らかにすることができ、すでに実験結果をまとめた論文としてJournal of Bone and Mineral Researchに受理された。一方、異所性骨化モデルでプラスミノーゲンの欠損マウスと野生型マウスで差がみられなかった理由や他の線溶系関連因子の骨・軟骨再生における役割については今後の検討課題である。
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今後の研究の推進方策 |
当初にの計画通り、他の線溶系関連分子の欠損マウスを用いて、骨・軟骨再生における組織線溶系の役割の詳細をさらに解明していきたい。具体的には、プラスミノーゲンを活性化する因子である組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)と組織蛋白分解系で役割をはたすことが示唆されるウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)の欠損マウスを用いて、tPAやuPAの骨修復過程における役割を明らかにする。さらに、in vitroの骨芽細胞、間葉系細胞、破骨細胞、骨髄細胞培養系を用いて、骨、軟骨再生機構におけるtPAやuPAの役割を分子生物学的に検討する。また、フローサイトメーターによる骨髄細胞分析により、骨修復における線溶系の関わりで、骨髄細胞がどんな役割をはたすか検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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