研究実績の概要 |
ClCチャンネル/トランスポーターファミリーに属するClC-3は約20年前にクローニングされ、その後多くの研究が行われてきた。その過程でClC-3は容積感受性アニオンチャネルであるという説や酸感受性アニオンチャネルであるという説が提唱された。しかしそれらの説はコンセンサスが得られたとは言えず、ClC-3の電気生理学的な性質については不明な点が今なお多い。ClC-3は、少なくともマウスにおいては、N末、C末アミノ酸配列の異なるa-fの6つのアイソフォームが存在すると考えられているが、アイソフォーム間の機能的な差異やその差異が生じるメカニズムについても多くが不明だった。本研究ではまず、我々が新規にクローニングしたアイソフォームClC-3dとこれまでに実験報告の多いClC-3aを比較しながら研究を進め、ClC-3dとClC-3aでは電気生理学的な性質は似通っていること、新規アイソフォームが容積感受性や酸感受性チャネルではないこと、ClC-3dとClC-3aでは細胞内におけるタンパクの局在パターンに違いがあることを見出した。次に各アイソフォームの局在性に差異を生じるメカニズムを探索するため、ClC-3a,-3b, -3c, -3dのN末、C末改変分子を数種類作成した。研究期間最終年度である27年度は、ClC-3aとClC-3dを主に取り扱った。これらのC末キメラ分子をさらに数種類作成し、タンパクの局在パターンを数種の細胞内小器官マーカーとともに観察した。これまでのところ一部の改変分子で局在パターンに変化が観察されたが、そのような分子では細胞内におけるタンパクの発現量が野生型に比べて減少しているように見えた。局在性の違いはタンパク量の多寡と相関し、またC末端のアミノ配列はClC-3タンパクの安定性に関与している可能性が考えられる。今後、時間が許せばこの点をもう少し明らかにして成果の取りまとめを行いたい。
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