研究課題/領域番号 |
24590292
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
中條 浩一 生理学研究所, 分子生理研究系, 助教 (80390699)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イオンチャネル / カリウムチャネル / KCNQチャネル / KCNE / 不整脈 / QT延長症候群 / 電位依存性 / 複合体 |
研究概要 |
心臓のカリウムチャネルKCNQ1とそのサブユニットであるKCNE1のタンデムコンストラクトを作成し、ストイキオメトリーをコントロールした上で電流キネティクスの解析を行った。4:4(KCNQ1四分子に対してKCNE1四分子の複合体)のストイキオメトリーが生じるKCNE1-KCNQ1のタンデムコンストラクトは、4:2(KCNQ1四分子に対してKCNE1二分子の複合体)あるいは4:1のストイキオメトリーを生じるコンストラクトのチャネルに比べ活性化キネティクスに遅延が認められ、また電位依存性も脱分極側にシフトしており、4:4のチャネルが4:2のチャネルなどに比べ、より開きにくいチャネルであることが明らかになった。KCNQ1-KCNE1チャネルの活性化のコンポーネントは3秒程度と20秒程度の主に2つが存在し、4:4チャネルの活性化が遅いことは主に20秒のコンポーネントが増大しているからであると考えられる結果を得た。また4:4と4:2のコンストラクトのKCNE1とKCNQ1の間をつないでいるアミノ酸リンカーの長さを変えることで、KCNQ1とKCNE1の間にダイナミックな結合解離が起こっているかを検討した。4:2のチャネルにおいてはリンカーの長さに依存した変化は認められなかったが、4:4のチャネルにおいてはリンカーの長さを34アミノ酸、100アミノ酸、300アミノ酸と長くするにつれて、電位依存性カーブが過分極側にシフトしていき、4:2チャネルの性質に近づいていった。2分子までのKCNE1は強固にKCNQ1分子に結合しているが、抑制的に働く3分子目、4分子目のKCNE1はKCNQ1にゆるく結合しており、ダイナミックな結合解離の存在が示唆される結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンデムコンストラクトの作成とその機能解析が初年度の主な計画であったが、その2点において、おおむね計画通り進行していると考えている。リンカーの長さに依存した活性化キネティクスの変化が、4:2と4:4のチャネルで異なる結果を得たことは意外な結果であった。KCNE1が結合している場所、あるいは数によってその結合の強さが異なることを示唆しており、来年度以降の光生理学実験などにより明らかにしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
タンデムコンストラクトを用い、全反射蛍光顕微鏡を用いた蛍光エネルギー共鳴移動(FRET)法などを用いて、KCNE1とKCNQ1の間のダイナミクスの解析を進めていく。特に24年度に明らかとなった4:4チャネルのみで観察されたリンカー長依存的な電位依存性のシフトから予想される、KCNE1の結合場所、あるいは結合数に依存した結合強度の変化を、光生理学的解析により明らかにすることを目的として、研究を推進していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度はFRET測定用の440nmのダイレクトダイオードレーザーを購入予定としていたが、電気生理測定・解析用のソフトウエアが必要になったため、レーザーの購入は見送った。次年度あらためてレーザーの購入を予定する。その他光生理学用の試薬、消耗品等を購入する予定である。学会発表のための旅費にも使用を予定している。
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