電位依存性カリウムチャネルKCNQ1とその修飾サブユニットKCNE1は、発現密度依存的にその分子構成(ストイキオメトリー)と電流のキネティクスを変化させることがわかっている。本研究においては、発現密度に依存して変化するサブユニット間の結合解離状態を評価、解析することが目的であった。 KCNQ1とKCNE1のタンデムコンストラクトを作成し、KCNQ1とKCNE1のストイキオメトリーを4:4、4:2、4:1と固定することで、電流の性質を比較検討した。4:4チャネルは、4:2や4:1チャネルに比べて、活性化のキネティクスが遅く、かつ電位依存性がより脱分極側にシフトしており、KCNE1分子が結合するほど開きにくいチャネルになることがわかった。一方、両分子間のリンカーの長さをさまざまに変え(34~268アミノ酸長)、擬似的に発現密度を変化させることで、それらのタンデムコンストラクトの電流を解析した。この場合は、リンカーの長さが長いほど、活性化のキネティクスが遅くなるという現象を見出した。以上の結果は、細胞膜上でKCNE1がKCNQ1に対して結合・解離する可能性を示唆していると考えられた。 同じ電位依存性カリウムチャネルであるKv4についても、KChIPおよびDPP6/10と呼ばれる2種類の修飾サブユニットが知られている。これらについても、一分子イメージングによるサブユニットカウンティング法と電気生理学的解析を適用することで、発現依存的なストイキオメトリーの変化と、それに伴う電流キネティクスの変化を確認した。発現密度依存的なイオンチャネル複合体のストイキオメトリー変化とキネティクスの変化は、KCNQ1チャネルのみならず、より広い種類のイオンチャネルでも起こりうることが示唆され、心筋細胞等の膜興奮性を検討する上で重要な知見を得た。
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