研究課題/領域番号 |
24590293
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
西谷 友重 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (50393244)
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キーワード | 心筋 / カルシウムセンサー / サバイバル / イノシトールリン酸 / カルシウムシグナル |
研究概要 |
心筋細胞のサバイバル/アポトーシス経路を理解することが心不全の予防に重要であるが、その全容は未だ明らかでない。申請者らは、心臓に発現しているが、その機能が不明であるCa2+センサーNCS-1の遺伝子欠損(KO)マウスの解析から、NCS-1がストレス下の心筋細胞のサバイバルを促進させる働きがある可能性を見出した。本研究では、1)NCS-1の心筋サバイバル因子としての機能を様々な観点から確認し、2)その作用の詳細な分子機構を明らかにすることを目的する。 昨年度までに、NCS-1のKOマウス由来の心筋細胞が野生型(WT)に較べ様々なストレスに対し脆弱であることを見出し、このことからNCS-1がストレス下の心筋細胞のサバイバルに寄与することを確認した。またその分子機構として、NCS-1がイノシトールリン酸キナーゼPI4Kの活性化などを介し、心筋内の主なサバイバル経路であるPI3K/Akt経路を活性化するためであることがわかった。今年度はこれに加え、ストレスを受けた際、細胞内Ca2+レベルが制御できるかについて調べた。その結果、KOマウス心筋では様々なストレス(血清除去、酸化ストレスなど)により細胞内Ca2+濃度の制御破綻が生じやすいことがわかった。さらに、ストレスにより細胞内ATPレベルの低下がおこるが、KOマウス心筋ではより低下しやすいことがわかった。以上の結果から、NCS-1はPI4Kを介しサバイバル経路を活性化する一方で、ストレス下でも細胞内Ca2+レベルを正常に保つことによりCa2+過剰負荷による細胞死を軽減し、またCa2+レベル依存的なミトコンドリアにおけるATP合成やPI3K/Akt経路の活性化を保つことにより、サバイバル作用を示すのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究目的である、“NCS-1の心筋サバイバル因子としての機能を様々な観点から確認すること”に関しては単離心筋細胞を用いて様々な細胞死測定法により確認できた。また2番目の目的である、“NCS-1によるサバイバル作用の詳細な分子機構を明らかにすること”に関しても、現在までにPI4KがNCS-1の標的タンパク質の一つであること、その結合がCa2+濃度依存的であること、またNCS-1はストレス下でも細胞内Ca2+レベルを適正の範囲に保つことにより、細胞死を軽減する一方でサバイバル経路を活性するという、新たな分子機構も明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は細胞実験のみならず、丸ごと心臓を用いたストレス実験、例えば虚血―再灌流実験などを試みう予定である。その中で、1)KOマウス心筋が虚血―再灌流障害に対し脆弱であるか?2)虚血―再灌流後のAktやその下流のシグナルの活性化はどうか?3)こういったストレスによりNCS-1の発現量が増加するか?などについて検討を行っていく。 これにより、NCS-1がストレスに反応してよりその機能を発揮する分子であるのか、またより生体に近い状況においても、NCS-1がサバイバル因子としての機能を果たすのか見極める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ある試薬を購入予定であったが、容量の小さいものに変更したため残高が生じた。 この残高は、平成26年度に論文掲載費として、特にカラーの図が多くなっていることから予定より高額になる可能性があるため、使用する予定である。
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