睡眠調節に関連する領域では、複数のニューロンの相互作用が睡眠・覚醒の調節に密接に関与すると考えられる。そこで今年度は主に、多点電極による複数ニューロンの同時記録を試みた。 ウレタン麻酔下のラットを用い、脳波と同時に、多点電極によって、セロトニン作動性ニューロンの局在する背側縫線核とその周辺から神経活動を記録した。多点電極は包括脳リソース支援プロジェクト(虫明拠点)から供与を受けた。 ガラス電極で記録すると、セロトニン作動性ニューロンは、活動電位の形から非セロトニン作動性ニューロンと区別できる。ウレタン麻酔下でラットは、振幅の大きな徐波の現れる深麻酔状態(Deep Sleep: DS)と、振幅の小さい浅麻酔状態(Light Sleep: LS)を繰り返す。セロトニン作動性ニューロンは、LSで数Hzの持続的発火を示し、DSで発火が著しく低下(あるいは消失)する (LS activeニューロン)。 多点電極によっても、ガラス電極で記録したセロトニン作動性ニューロンと同じような形の活動電位、同じような発火特性を示すニューロンを記録できた。したがって、このようなニューロンをセロトニン作動性と見なした。数百μm離れた2点から2つのセロトニン作動性ニューロンを記録すると、2つのニューロンは、非常に高い相互相関をもって発火していた。広い領域の多数のセロトニン作動性ニューロンが同期して発火していると考えられる。DSからLSへの(LSからDSへの)移行期に、非セロトニン作動性LS active ニューロンには、セロトニン作動性LS activeニューロンの活動上昇(活動低下)に先行するものと、遅れるものが記録できた。背側縫線核内でセロトニン作動性ニューロンの活動様式は、異なったニューロン群との相互作用によって調節されていると考えられる。
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